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よくある話4 / まさみちまさみち

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商談が予想外に早く済んでしまった。
正確には失敗に終ったというべきか。
あまりに早いとまた係長にイヤみを言われてしまうので。
改札口で。私は休憩をすることにした。


低い日差しは10月のそれだが。
暑い。ミネラルウォーターを一気に飲み干す。

エスカレーターを上るとモノレールは出たところだった。
何やってんだろ私。
座ろうとして、後ろから声をかけられた。

彼だった。
「ひさしぶり・・。元気だった?」

どうしてこんな時に会うのだろう。
汗で化粧はくずれかかっている。
15分も国道沿いを歩いたから、トラックにあおられ、
髪もボサボサ。
「5年ぶり、くらいか?」全然変わっていない。
他愛ない話をした。数駅だけの再会。
それでいいと思った。
なのに。
「転職したんだな。名刺くれよ。あ、これ、俺の。また連絡する」

また連絡する。バカみたいに反芻する。また連絡する。
帰社の連絡を入れなかったことで、こうるさい係長にはこっぴどく叱られたけど。まったく気にならなかった。

「でなんでぼおっとしてるわけ?」目の前にいた男を無視していたようだ。「お前さ、今日変。仕事中もぼおっとして」
変。確かに変かも。今まで好きだったはずの人が色あせてみえるもの。

メールは翌日来た。近々会おうよというので。軽く明日でもいいよというと。本当にアポが取れてしまい。
私達は会う事にした。

「営業。ってかんじじゃなかったけどな。ずっとあの仕事をすると思ってた」「そっちこそ。一番似合わないスーツ着てるよね」

5年のブランクが嘘のように。
こうしていることが自然なのだと思ってしまうくらい。

私達の会話は弾んだ。
彼が変わったのは。
あの頃、飲めないお酒が飲めるようになっていたことと。
左手の薬指に。やっぱり。指輪が光っていたこと。

店を出たのは10時過ぎだった。
風が少し冷たい。銀杏の実を踏みそうになって彼は飛びのく。
「なあ。お前、結婚してないの」唐突に聞かれた。
「してない」「なんで?」「何でって聞かれても」「仕事忙しいから?」「まあ、そんなとこだよ」他愛の無い会話だと思った。

もっと話したい事はたくさんあった。
聞きたいことも。言いそびれたことをもう言ってしまいたかった。今なら酔っ払ってたからって言い訳で済む。

あのね・・と言いかけて、急に抱き寄せられた。
彼の香りが強くなる。

唇が重なり。

嘘。

会いたかったと耳元でささやかれ。

こんなことは信じない。
ずっと夢見ていた瞬間であったとしても。

これは何かの間違いだ。
そう思いながらも。
私の腕は彼の背中に。
しがみつき。

私も。と。
自由になった唇が動いた。

続劇




一度パスしたので長めに書いてみました。フィクションでございますので悪しからず









2006年10月19日(木) at 22:19