もうすぐ妻の誕生日だということで、ボクの母から美味しいものでも
食べにいこうというメールが来た。「じゃあここに行ってみたい」と妻は
本棚からとあるムック本を出してきてた。そこは写真で見る限りでは
なかなか美味しそうだし、フレンチレストランにしては量も多そうだし、
値段も手頃だし、場所も家からかなり近い、しかも子供連れ歓迎と銘打って
いたので、迷わずそこに決定、完全予約制と書いてあったので、まだ日に
余裕はあったけど、そのまますぐ予約して、母にもそのことを電話した。
すると「そんな店あったっけ?」という話になって、たしかに近所では
あるんだけどボクもよく分からない、きっと最近新しくできた店なんだろう、
とそのときは適当に説明して電話を切った。
ムック本に載っているその店の地図を見るとちょっとややこしそうな場所に
あるようで、母親を連れて道に迷うのもなんだし、一度どんな店か下見に
行こうじゃないかということになって、妻と自転車で予約したその店を見に
行くことにした。地図を頼りにしばらく周辺をウロウロしてみたけど、
なかなかみつからなくて「間違いなく近くに来ているはずなんだが・・」
と同じ場所を二周ぐらいしかかったところで、ひょっとして、コレ?
というような店が視界に入ってきた。
そこはフレンチレストランというより元洋食屋の店舗を利用して日用雑貨を
店の玄関口の所で売っている露店商、という感じで、野菜、果物、カレールウ、
1.5ℓペットボトルのジュース類(冷えてない)、洗剤、京都市指定ゴミ袋、
等が3畳分ぐらいのスペースに漫然と、さほど安くもなく、むしろ相場より
少し高いぐらいの値段で蚤の市のような状態で売られるでもなく売られていた。
まあ見てくれは露店だけど、内容的にはコンビニエンスストアと言えなくも
ない。しかし客は1人もいないし、通りすがりに興味を示して立ち止まる
人もいない、当然だ、スーパーに行けば同じものがもっと安く買える。

店内に目をやると、カウンターと4人掛けのテーブル席が3つぐらいあって、
それらの上にも雑多な日用品や新聞のようなものが山積みされていて、
ただでさえ狭い店内を占拠、到底客を呼べる状態ではないのだった。
そして奥の4人掛けの席には店番と思われるオバハンが腕組みしてうつら
うつらと居眠りをしていた。露店の応対がすぐにできるように入り口は開け
放してあって、店内はクーラーではなく扇風機が回っていた。
僕たちはそれらの光景をみて唖然とした。
「これがさっき予約したレストランなのか・・?」
よく見ると店の通りに面していない方の外壁に紙に手で書いたメニューと
「ケチャップオムライスあります」というおすすめ的なPOPが貼ってあった。
それにしても本気でレストランをやる気があるんなら店の前でコンビニ、
いや、露店なんかやるのはおかしいし、客をナメている。いや、百歩譲って
露店はやっていいのかもしれないけれど、通りすがりの人がパッと見てそこが
レストランであると認識できる程度の規模であってほしい、今の状態だと
露店がメインで、レストランはついでにやっているようにしか見えない、
いや、ついでにすらやってないように見えた。
ひょっとしたらコンビニの横に飲食スペースというのはミニストップを
意識しているのかもしれない。う~ん、多分していない・・。

なるほど完全予約制という理由がわかった、そりゃ通りすがりであんな店に
入る人は誰もいないもんな、だいいちいきなり来られても対応できるとは
思えないし・・、料理はあの居眠りをしていたオバハンが作るんだろうか?
予約客が来るときでも露店はあのままの状態なんだろうか?
予約して行ってみてあんな状態だったら大抵の客は引いてしまうので、
ひょっとしたら来る前に急いでどこかに片付けたりするんだろうか、
でも片付けるとこなんて店の中以外どこにもなさそうだ、
ただでさえ店内はごった返してるのでまずそこから片付けなければならない
ではないか、予約客が入ったからといって、そんな簡単に舞台の場面転換
みたいにくるりんパッと下町の小粋なフレンチレストランに変身するとは
到底思えない。これはヤバイ、全く想像していなかった事態だ・・。
話のタネに自分たちだけで行くのならまだいいが、母親にお金を出して
もらって一緒に食べに行くのにこの店はちょっとありえない。
いや、まてよ・・もしかしたら店の状態はヤバいけど、味はめちゃくちゃ
美味しいのかもしれない、なにごとも外見だけで判断するのは早計だ。
もしかしてネットには口コミ情報がわんさと寄せられてるかもしれない・・
と、一縷の望みを繋ぎつつ、ひとまず家に帰って、ヤフーなどで検索して
みたけど、同名の他店の情報が出てくるばかりで、この露店コンビ二
レストランのことは一件も寄せられてなかったのだった。もうダメだ・・
悩んだあげく結局予約はキャンセルすることにした。電話をした妻によると、
普通お店なんかに電話を掛けた場合「ハイ!○○です」とまず店名で応答する
のが常識だろうけど、その露店コンビニのオバハンは電話に出ても何も
名乗らず、こちらが「レストラン○○さんでしょうか?」と問いかけると
初めて「ハイそうです」と答えたんだそうだ。電話の応対からして
そうなのだから、さもありなんである。あとで考えてみたら、最初に
予約したときもそういう応対だったので、なんか変だな、と思ったそうだ。
それにしても店を載せたムック(もちろん今年発売されたもの)はなんで
ここを取材しようと思ったんだろう、ちょっと変なレストランというくくり
で紹介するならまだしも、いかにも家族で行けるいい感じの店っぽく
紹介されてたからな・・まさか、「穴場」とでも思ったんだろうか・・・
あれが穴場なら全国の客の来ないさびれた店は全部穴場だよ・・。
僕たちはたまたま近所に住んでいてたまたま思いたって下見をしたから
良かったものの、大抵の人はそんなことしないわけで、遠くから観光で
予約して行ってあの状況だったら、そのガッカリ感の矛先は一体どこに
向ければいいんだろう、載せた雑誌が悪いのか、露店やってるオバハンが
悪いのか、それとも信じて予約した客がバカなのか・・・
この日、下見に行ったのはレストランとしては営業時間外の昼の3時頃
だったので、もしや営業時間内にいくと露店はキレイに撤去され、
客も押し掛け、店の雰囲気も一変しているかも、という気持ちは捨て切れず、
次の日、夕方の6時ぐらいにもう一度店の前に行ってみたけど
やっぱり全く同じ状況でした。(そりゃそうだ)
でもなんだかんだ言って自分は結局そこの料理は食べてないわけで、
オバハンにしてみれば「文句を言うなら食べてからにしてくれ」
と言いたいところだろう。確かにこれは観てもいない映画を出てる俳優
だけみて批判してるようなもんだ、自分の怠慢を棚に上げている。
よし、今度いっぺん1人でおすすめのケチャップオムライスでも
食べにいってみよう・・でも予約だけはもう二度としたくないよ。
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