12/27号 オススメ新刊読んでみましょ 『夜市』 恒川光太郎 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

今年も後少しですね。
なんだかちょっとセンチメンタル、モモです。
この時期いつも口に出すのは
「早かったなぁ」という言葉。
皆さんにとって今年一年はどんな年でしたか?
私は今年から本屋に勤め始めて
こうやって本に対しての文章を書き始めたりして
ドップリ本に囲まれた一年でした。
お陰で沢山のステキな本にも出会いました。
今年読んだ本で一番心に響いたのはやっぱり…。
発表は最後の挨拶で(笑)
ではでは今日もいきましょー!
[ 01 ] 文庫になったよ 読んでみて byモモ
■『夜市』 恒川光太郎
□不思議な夜市へ、弟を買い戻しに
今回ご紹介する本は
2005年日本ホラー小説大賞受賞作です。
実は私、この賞のファンだったりします。
どんな格式高い文学賞よりも心待ちにしていて
大賞受賞作はかかさず読んでいるのです。
けれどほとんどの年が「受賞作なし」で
12年の歴史で大賞受賞作は6作品。
来た!
今年は来たよ! 大賞作!
と、いうことで
ホラーだけどハイテンションでお届けします(笑)。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
大学生のいずみは、高校時代の同級生の裕司から
不思議な誘いをうけた。
「夜市が開かれるそうなんだ。行ってみない?」
誘われるままに近くの公園から
海に抜ける森に入っていったが
その先にはいつもと違う景色が広がっていた。
無数の店が間隔をとって並んでいたが
あきらかに違うことがある。
そこは着物を着た狸やゴリラが歩き
人魂がフワフワ漂っている世界だった。
怯えながらも裕司に問うと
実は彼は小さい頃、この夜市に
迷い込んだことがあるんだと言う。
買い物をしなければ出ることのできない夜市で
裕司は一緒に迷い込んだ弟を売り
「野球の才能」を買ったのだった。
そして今日、裕司は弟を買い戻すため
また夜市へとやってきたのだった。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
ホラーというより不思議物語という感じ。
自分が住む世界とは違う世界があって
そこには時々こちらの世界の人が迷い込む。
そんな想像したことありませんか?
裕司が小さい頃に迷いこんだ世界は
買い物をしなければ出ることのできない
不思議な夜市。
10年後またやってきた夜市に弟はまだいるのか。
なぜいずみを連れてきたのか。
想像がつかない世界での話は
もちろん展開も読めなくて、
ずっとハラハラドキドキします。
あなたもこの不思議な夜市に顔を出してみませんか?
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『夜市』
├ 著者:恒川光太郎
├ 出版社:角川書店
└ 価格:1260円(税込)
text by モモ
2005年12月27日(火) at 13:22
12/27号 ときには真剣! 政治経済入門 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

[ 02 ] ときには真剣! 政治経済入門 byミナック
■『松下政経塾とは何か』 出井康博
□松下幸之助の抱いた理想と、現実
初めまして。
この度、読書部メールを時々書かせて頂くことに
なりました、ミナックと申します。
私の読書部メールは、かなり突飛に色々なジャンルを
行き交うと思います。
時に訳がわからなくなるかもしれませんが、
何卒見捨てずに末永く宜しくお願い致します。
それでは栄えある第一回目。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
2005年は、政治がワイドショーで扱われ、
まるでお正月恒例の、
芸能人ハワイ旅行入り報道のような状態でした。
ワイドショーのレポーターも
さぞかし大忙しだった事でしょう。
かくいう私も小泉首相の発言や、
チルドレンたちの服装、朝食のメニューまでもが気になり、
相当メディアに踊らされた日々を送りました。
そんな中、選挙後は「松下政経塾」という言葉をよく耳にしました。
民主党の若きエース、前原代表が出身であるということの
影響かもしれません。
松下政経塾は、経営の神様と言われた松下幸之助氏が
1979年に若者の間で人気の街茅ヶ崎に、
政治家を養成する場として
私財を投じ設立された、財団法人です。
松下電器グループでは、朝会や昼会などで、
松下幸之助氏が作られた「遵奉すべき7精神」
というもの唱和すると聞きます。
あれだけの人数が所属する集まりであれば、
その7精神が心に響く人とそうでない人、
色々と分かれる事でしょう。
それでも、経営者を超えた思想家として成された業績は、
現在の日本社会にたくさんの影響を残していると思います。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
ビジネスの世界では充分過ぎるほど成功し、
これ以上得るものはないところまでくると、
人はそのステージが変わるのでしょうか。
後年の幸之助氏は日本の行く末を非常に危惧し、
この塾を設立したと聞きます。
政治家を志した、何もコネもない若者達が
松下政経塾で一体どんな教育を受け、政界へ飛び出していったか。
それを知ると、ワイドショー政治劇も
違う角度から見る事ができます。
また、松下幸之助という人が何を理想として
この塾を設立されたのかを自分なりに考えることで、
日本の国は政治家だけが作るものではなく、
私たち国民一人一人にその責任があるという心が芽生えだします。
本気で日本を動かそうとした幸之助氏が抱いた理想と、
現実を知る、とてもうまくまとめられた勉強になる本です。
長いお正月休みに、ちょっとこんな本を
日本酒片手に読むのは如何でしょうか。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『松下政経塾とは何か』
├ 著者:出井康博
├ 出版社:新潮社(新潮新書)
└ 価格:735円(税込)
text by ミナック
『松下政経塾とは何か』著者サイン入り本を、3名の方へプレゼント!
お名前、お持ちのblogのURLを書いて、book@kansai.com まで
ご応募ください。
発表は、発送をもって代えさせていただきます。
2005年12月27日(火) at 13:15
12/27号 一秒読書作家から 今月は中村桂子! 『自己創出する生命 普遍と個の物語』 中村桂子 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)
[ 03 ] 一秒読書作家から 今月は中村桂子! byきょうこ
■『自己創出する生命 普遍と個の物語』 中村桂子
□“なまもの”としての湿った生命とは
「スーパーコンセプトとしての生命について考えたい」
中世の神、近代の理性に代わる、
21世紀の基本概念(スーパーコンセプト)は生命。
人間も自然の一員であるという日常感覚が
DNAによって実証された今、
人工・人・自然をひとくくりとする生命が姿を現す。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
ええと、白状してしまうと、
読み慣れるまでにとても時間がかかりました。
これって日本語よね? と思うくらい頭に入ってこない箇所も。
けれど、中村桂子さんの勢いが並じゃないのです。
理論整然と書かれているには違いないのですが、
作者の意欲が手に取るように分かるのです。
DNA=複製と考えられてきたけれど、
DNAの中のゲノムに目を向けてみれば、
自己創出と呼ぶ方が実態に合っているのではないか。
ゲノムには普遍と個が共存している。
ヒトはヒトを生み出すけれど、私たちは一人ひとり違う。
生命は統一を踏まえた多様なのである。
頭のいい方の文章は難しく
疲れてしまう部分もあったのですが、
それでも大切なことが書かれてるような気がして
読み進めてしまうのはなぜなのでしょう。
「“なまもの”としての湿った生命を実感して欲しい」
という中村桂子さんの思いに終始圧倒されっぱなし。
性懲りもなく、もう一度読もうかと思わせてくれる一冊でした。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『自己創出する生命 普遍と個の物語』
├ 著者:中村桂子
├ 出版社:哲学書房
└ 価格:2415円(税込)
text by きょうこ
■『自己創出する生命 普遍と個の物語』 中村桂子
□“なまもの”としての湿った生命とは
「スーパーコンセプトとしての生命について考えたい」
中世の神、近代の理性に代わる、
21世紀の基本概念(スーパーコンセプト)は生命。
人間も自然の一員であるという日常感覚が
DNAによって実証された今、
人工・人・自然をひとくくりとする生命が姿を現す。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
ええと、白状してしまうと、
読み慣れるまでにとても時間がかかりました。
これって日本語よね? と思うくらい頭に入ってこない箇所も。
けれど、中村桂子さんの勢いが並じゃないのです。
理論整然と書かれているには違いないのですが、
作者の意欲が手に取るように分かるのです。
DNA=複製と考えられてきたけれど、
DNAの中のゲノムに目を向けてみれば、
自己創出と呼ぶ方が実態に合っているのではないか。
ゲノムには普遍と個が共存している。
ヒトはヒトを生み出すけれど、私たちは一人ひとり違う。
生命は統一を踏まえた多様なのである。
頭のいい方の文章は難しく
疲れてしまう部分もあったのですが、
それでも大切なことが書かれてるような気がして
読み進めてしまうのはなぜなのでしょう。
「“なまもの”としての湿った生命を実感して欲しい」
という中村桂子さんの思いに終始圧倒されっぱなし。
性懲りもなく、もう一度読もうかと思わせてくれる一冊でした。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『自己創出する生命 普遍と個の物語』
├ 著者:中村桂子
├ 出版社:哲学書房
└ 価格:2415円(税込)
text by きょうこ
2005年12月27日(火) at 13:00
12/20号 文庫になったよ 読んでみて 『トワイライト』 重松清 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

ちょっと早いですが
メリークリスマス!!
皆さんのクリスマスのご予定は?
え? 彼とデート?
え? 友人達とパーティ?
わーイイですねぇ…。
私はガッチリ仕事ですが(涙)。
本屋さんにクリスマスはありません。
意外に多いんですよ、本をプレゼントする人。
なのでそのラッピングに追われる日々なのです。
実は私も、友達夫婦へのクリスマスプレゼントを
写真集にしたのです、ムフフー。
よろこんでくれるといいな〜♪
ではでは今日もいきましょー!
[ 01 ] 文庫になったよ 読んでみて byモモ
■『トワイライト』 重松清
□ 30年後の自分への贈り物、あけてみれば…。
12歳だったあの頃、
自分の未来への可能性は限りなくて
キラキラしたものだと信じて疑わなかった。
タイムカプセルに入れた
30年後の自分への贈り物は
ずっと色あせないものなのだろうか。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
未来への希望を詰め込んだあの日から26年。
ある日、新聞に載った小さな文字を見つけた。
「タイムカプセル開封のお知らせ」
母校が廃校になるので
30年後にあけるはずだったタイムカプセルを
あけるため、集まってほしいとのこと。
田舎という響きが似合わない
都心から少し離れた思い出の場所で
再会した同級生たち。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
あの頃あだ名が「のび太」だった少年は
妻と子供と平穏な日々を過ごしていたが、
もうすぐ訪れるリストラ宣告を前に悩む日々。
あの頃あだ名が「ジャイアン」だった少年は
あの頃「しずかちゃん」的存在だった少女と
結婚し、子供も二人。
しかし夫婦仲は冷め切っていて、離婚も秒読みだった。
あの頃からずっと勉強ばかりして
予備校講師としてキャリアウーマンになった少女は
立派な家と名声は手に入れたけど、ひとりぼっちだった。
これだけは分かる。
26年前予想していた未来の自分は
決してこうじゃなかった。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
26年間全く会ったこともなかった同級生たちは
タイムカプセルをあけるために集まった日を境に
いやがおうにも関わりあうこととなった。
「しょうがない」と思っていた現実と
タイムカプセルの中に詰まっていた未来の差が
大きすぎて、気づいてしまったのだ。
「このままでいいのか?」と。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
この作品の表紙は、太陽の塔の模型のイラスト。
ちなみにハードカバーだったときの表紙は
太陽の塔、実物の写真でした。
彼らが小学生だった頃、大阪では万博があって
ひとりの少年は太陽の塔の模型を
今もまだ持っていたのです。
太陽の塔には3つの顔があります。
てっぺんに輝く黄金の顔は「未来の太陽」。
お腹の部分にある顔は「現在の太陽」。
背後にある黒い顔は「過去の太陽」。
黄金の太陽は12歳だったあの頃の顔。
お腹の太陽は38歳の自分の顔。
黄金の太陽に比べて
お腹の太陽の顔がゆがんでいる。
物語はそんな太陽の塔に沿って進んで行きます。
自分なりの幸せを探し始めた大人たち。
外側から見守っているつもりが、
自分へも問いかけてみたり。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『トワイライト』
├ 著者:重松清
├ 出版社:文藝春秋(文春文庫)
└ 価格:660円(税込)
text by モモ
2005年12月20日(火) at 11:49
12/20号 おいしい本、いただきます! 『愛がなくても喰ってゆけます。』 よしながふみ / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

[ 02 ] おいしい本、いただきます! byモモ
■『愛がなくても喰ってゆけます。』 よしながふみ
□実在のお店が登場! 美味しいショート・コミック。
おいしいものが大好きです!
おいしいものが嫌いって人はいないですよね。
苦手な人との食事は味も落ちるっていうけど
おいしいものはおいしいって思うんですよ。
そこにおいしいものがあるだけで会話がはずんだり
気分が良くなったりしたこと、ありませんか?
おいしいものは偉大なのです!
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
コアなファンが多い漫画家よしながふみが送る
グルメ・ショートショート。
主人公は漫画家YながFみ(笑)。
一応全てフィクションと書いてますが…。
そんなYながが出会うおいしいものたちと
それにまつわる人との関わりのコミックです。
ぜひお腹をすかせてユルリとお読み下さい♪
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
とにかくもう
すんごくおいしそうなんです!
今までみたグルメコミックの中ではダントツで
よだれジュルジュルになっちゃいますよ。
しかも出てくるお店は実際に存在するお店ときた!
残念ながらすべて東京なんですが、
東京に行った時のお楽しみとしてとっておきましょう。
注・これを読むと絶対においしいものを食べたくなります。
実際、私は
「今まで食べた場所で一番おいしい場所は…」
とさんざん思いを巡らせ、
一週間後、友人と一緒にその場所を訪れました。
なんと3年ぶり。
3年間も私はちゃんと確実においしいものを
食べようとしなかったんだなぁとちょっと反省しながらも
おいしくて楽しくてステキな夜を過ごしたのでした。
仲の良い人とはもっと仲良く、
キマヅイ人ともそれなりに楽しく。
おいしい食事はステキな時間を連れてきてくれる。
そんなことを気づかせてくれた
大事な大事な本なのです。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『愛がなくても喰ってゆけます。』
├ 著者:よしながふみ
├ 出版社:太田出版
└ 価格:924円(税込)
text by モモ
2005年12月20日(火) at 11:20
12/20号 一秒読書作家から 今月は中村桂子! 『往復エッセイ「いのち」についての60の手紙―十代の君たちへ』山折哲雄 中村桂子 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

[ 03 ] 一秒読書作家から 今月は中村桂子! byきょうこ
■『往復エッセイ「いのち」についての60の手紙―十代の君たちへ』 山折哲雄 中村桂子
□宗教と科学から見える「生」とは?
これは、宗教学者の山折哲雄さんと
生命科学者の中村桂子さんとが
生きることについて綴り合う往復エッセイ。
産経新聞で連載された「生を語る―十代の君たちへ」を
改題し、加筆したものです。
宗教と科学なんて、まったく別ものなんじゃないか?
と私は首をかしげながら読んでみましたが……。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
十代向けとあってか、
中村桂子さんの著書より断然読みやすい。
しかし、内容はなかなか深いのです。
読み進めるにしたがって、これって十代向け? と。
大人が読んでも、ふんふん、と考えてしまいます。
「複雑なら上等というものでもない。」
これは中村桂子さんが進化について書いた一行。
進化は下等から高等への階段ではない。
微生物はこれ以上進化できないほどうまく生きているのに対し、
ヒトはまだでき損ないの部分が多いのだとか。
確かにただゆらゆらと生きている微生物のほうが
潔い気がしなくもない。
生きるとは? なんて考えてしまうこと自体、
生きることを複雑にしているのかもしれません。
山折哲雄さんの物腰やわらかな文章もすてきです。
仏教の無常観と、細胞の死と生命の再生は
つながる部分があるのだとか。
けっきょくは同じ「生きる」ことを学問にしているお二人。
生命科学と宗教は、かけ離れたものだと考えがちですが、
底に流れるものはもしかしたら同じなのかもしれません。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『往復エッセイ「いのち」についての60の手紙―十代の君たちへ』
├ 著者:山折哲雄 中村桂子
├ 出版社:産経新聞ニュースサービス
└ 価格:1200円(税込)
text by きょうこ
2005年12月20日(火) at 11:00
12/13号 文庫になったよ 読んでみて 『博士の愛した数式』 小川洋子 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

[ 01 ] 文庫になったよ 読んでみて byモモ
■『博士の愛した数式』 小川洋子
□80分しか記憶のもたない博士と、私と息子の日々。
ひさびさに出会ってしまいましたよ。
一日で読み切った本。
と、いうか
読むのが止められなかった本。
あたしの心をつかんだのは
あまりに悲しく暖かい奇跡の愛の物語。
文庫になりました。
こりゃ読まなきゃダメでしょ。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。
そして博士は息子を、ルートと呼んだ。
息子の頭のてっぺんが、ルート記号のように平らだったから。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
私は家政婦。
まわりの家政婦達の中ではダントツで若かったけど
キャリアは10年になる。
高校三年の時に妊娠して家を飛び出してから
息子と二人きりの生活だ。
私はある日、ひとりの男性の家政婦となった。
それが博士で、彼の背広の袖には古びたメモが一枚。
「ぼくの記憶は80分しかもたない」
交通事故で脳に障害をもった博士は
80分しか記憶がもたない。
80分で記憶が消えてしまう博士にとっては
玄関にあらわれる私は常に新しい家政婦だった。
そしていつも靴のサイズや誕生日を尋ねた。
数字が博士の言葉だった。
そんな日々にも慣れたある日
私に10才の息子がいることを知った博士は
可哀想だからココに連れてくるようにと言った。
息子ルートを加えた
ぎこちなく暖かい日々がはじまったのだ。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
80分しか記憶のもたない人との日々は
どんなに空しいだろうと思う。
毎日会っていても、どれだけそばにいても
80分離れるだけで忘れてしまうのだから、すべて。
博士は自分のことを覚えることのない人。
喧嘩をした日も
楽しかった日も
どれも覚えていてはくれない。
忘れてしまうことをわかっている博士の背広には
沢山のメモが貼られている。
そのメモを見て確認する日々は
博士にとってもなんて空しいだろう。
それでも家政婦は今日も息子のルートと
博士の家へと通うのだった。
博士の出す数学の問題を必死で考えて
その正解をわかちあうことに喜びを見いだしていた。
この3人はどうなっていくんだろう。
ずっとこのままなのだろうか。
せつなくて苦しくて、ページを閉じることができなかった。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
2006年1月
この小説は映画になります。
もちろん私は観にいきますよ。
ひとりで。
だって絶対、人には見せられない顔になるから。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『博士の愛した数式』
├ 著者:小川洋子
├ 出版社:新潮社(新潮文庫)
└ 価格:460円(税込)
text by モモ
2005年12月13日(火) at 11:22
12/13号 これぞネタ本! 『大阪弁の秘密』 わかぎえふ / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

[ 02 ] これぞネタ本! byモモ
■『大阪弁の秘密』 わかぎえふ
□愛すべき大阪弁、その奥深くまで!
大阪弁、好きですか?
私は生まれも育ちも大阪で
27年間大阪弁を使ってきたのですが
最近すごいカルチャーショックがありました。
知っていましたか?
大阪弁って
意外に通じません。
お笑いブームや、関西出身のタレントさんが目立ち
テレビからもよく聞こえてくる大阪弁。
方言でありながらもある意味、
共通語のように思っていたのです。
私にはありがたいことに全国各地に友人がいまして
彼等と話すときはあまり大阪弁は出ないのですが
やっぱりたまにでます。
その「たまに」でさえも
「え? どういう意味?」
と言われることが多々。
ポピュラーでありながら奥が深い大阪弁。
そんな大阪弁を研究しつくしたこの本、
今回ご紹介しますね。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
この本を読んで発見したことズラリ
「しんど」訳・疲れた
旅行から帰ってきて「あーしんど」
体調の悪そうな友人に「しんどそうやな? だいじょぶ?」
彼氏と別れるときに「あんたなぁ、しんどいねん」
この言葉はおもに女性が使う言葉らしい。
あぁ確かに男性はあんまり使ってない!
この「しんど」という言葉。
響き自体がとても重い。
大阪人にとって「疲れちゃった」という言葉では
変えることのできない言葉なのです。
「ちょー」訳・ちょっと
人を呼び止める時に「ちょー!」
すごく聞いてほしい時に「ちょーちょー聞いて!」
すごく違うと言いたい時に「ちょーちょー違うって」
普通に使っているけども
活字にするとなんておかしいのでしょう(笑)。
第一、人を呼ぶときに「ちょー」というのがおかしい。
町長でも長調でも蝶々でもありません。
−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
ちなみに先日「若い子は使ってないよ」と
山形の友達に説明した言葉がありまして
その言葉というのが
「ほな」
ものすごいベタな大阪弁で、
昔の人やお笑いの言葉だと熱弁したのですが
私…
使ってました…。
しかも友達との別れ際に毎回…!
ちなみに私の場合は「ほなね」なのです。
「じゃあね」みたいな感じで。
口に出して言ってみてください、
ほらなんか可愛いでしょ?(無理矢理?)
私、この「ほなね」の響きがたまらなく好きなんです。
あと個人的に好きな言葉は「ぬくい」。
「ぬくい」は「あったかい」とは違っていて
適度に人肌程度のぬくもりを残してる感じなのです。
「まぁ、ぬくもりやぁ」
「この布団、ぬくぬくやわ」
「寒い?」「ううんぬくいよ」
などと、なんかおっとりしてて良いじゃないですか!
え? つっぱしってますか? 私(笑)
どこまでも奥が深い大阪弁。
使う人も使わない人も楽しめる本ですよ。
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『大阪弁の秘密』
├ 著者:わかぎえふ
├ 出版社:集英社(集英社文庫)
└ 価格:450円(税込)
text by モモ
2005年12月13日(火) at 11:04
12/13号 一秒読書作家から 今月は中村桂子! 『ゲノムが語る生命―新しい知の創出』 中村桂子 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

[ 03 ] 一秒読書作家から 今月は中村桂子! byきょうこ
■『ゲノムが語る生命―新しい知の創出』 中村桂子
□日常の生活とつながる科学。
どうしても普段と切り離されて考えられがちな科学。
けれど、そんなことはないよ、あそこにもここにも科学が
転がってるよ、と教えてくれるのがこの本。
だって『堤中納言物語』から
『風の谷のナウシカ』の話まで出てくるのですから!
生きることを基本にした社会で大切なことはなんだろう、
と作者が考え過ごす中で生まれたキーワードが、
「生きる」「変わる」「重ねる」
「考える」「耐える」「愛づる」「語る」。
この7つの動詞を軸に、生きているとは
どういうことか、を探っていきます。
−−−−−−−−・−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−
きっとたくさんの方が苦手なはず、「耐える」こと。
「生きるということは、日常生活を考えてみても、
まさに複雑さに耐えることの連続」
なのだとか。どうですか? 耐えてますか?
ここでいう「耐える」は、
じっと動かずに我慢することではありません。
複雑なものを複雑なものとして、
白黒つかないことをあらかじめ分かったうえで、
それでも考え続けることが大事なのだそうです。
複雑なものを前にすると、
ぽいと投げ出してしまいがちですが、
複雑さと向き合うことで、
人は自分の中に善悪を引き受けることができる。
つまり精神的に強い人になれるのだとか。
わからない、とぽいと投げ出してしまうことが多々ある私…。
何か大切な機会をたくさん逃してしまって来たのではないかと、
ハラハラしながら読んでいました。
今日から、耐えることを少しづつでも学ばなくては!
−data−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・−
■『ゲノムが語る生命―新しい知の創出』
├ 著者:中村桂子
├ 出版社:集英社(集英社新書)
└ 価格:735円(税込)
text by きょうこ
2005年12月13日(火) at 10:55
12/6号 文庫になったよ 読んでみて 『東京ゲスト・ハウス』 角田光代 / buzzbooks
本 > 部メール (ど関西×読書人脈)

冬の寒さにブルブル震えるモモです、こんにちわ。
あっという間に12月。
12月になると今年一年振り返りますよね。
んで「何があったんだろう…」って
あんまり思い出せずに落ち込みますよね(笑)。
そんな思い出を忘れるための忘年会、
今年は何回ありますか?
飲み過ぎないよーに!
食べ過ぎないよーに!
ハメをはずしすぎないよーに!
…自分に向けていってます(笑)。
それでは今回もいきましょー!
種類の全然違う青春小説をご紹介します。
[ 01 ] 文庫になったよ 読んでみて byモモ
■『東京ゲスト・ハウス』 角田光代
□彼女にフラれたアキオは、不思議なゲストハウスへ。
成田に着いて最初にしたことは
到着出口にマリコを探すこと。
成田に着いてすぐしたことは
マリコに電話をかけること。
アジア放浪の旅から
半年ぶりに帰ってきたアキオを
待っているはずの恋人の電話には
知らない男が答えた。
マリコに恋人ができていた。
お金もなく、行く場所もない。
思い付くのは旅先で知り合った女性、暮林さんの言葉。
「おばあちゃんが住んでた一軒家にひとりなの。
もし旅行から帰って、泊まるとこがなかったら
泊まりにきていいよ。一泊300円。」
そして僕が暮らすことになった家は
行くあてのない人が共同生活を送る
ゲスト・ハウスのような場所で
さまざまな人が増えていくのだった。
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二つの話が同時進行するのです。
一つはアキオとマリコの関係。
なんとなく放浪で旅にでた彼を
素直に待ってる女はぶっちゃけ少ない。
彼は旅先で非日常な半年を過ごすけど
彼女にはいつもと変わらない日常が半年、
この違いは天と地の差だったりする。
でもその時間の流れが
いまいちピンとこないアキオは
納得したようで納得いかない。
マリコに電話をかけてなんとか話をしようとするも
冷たく切り捨てられる。
二人はこのまま終わってしまうのか?
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もう一つはゲストハウスに暮らす面々。
ゲストハウスの主、いつもあっけらかんとしている暮林さん。
無口で何を考えてるか分からない男、ヤマネさん。
いつも大きな声で騒がしいカップル、フトシとカナ。
その二人がフラリと連れてきたカナコ、カツ、ペルー。
お互いの生活にあまり触れようとせず
でもなんとなく関わりながら日々は過ぎていく。
彼等は旅から帰ってきても旅の途中のような
このゲストハウスにドップリひたっていた。
けれどある日、新しい住居人と共に
現実もやってきたのだった。
不思議な共同生活とマリコ、
アキオはこれからどうするのか。
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■『東京ゲスト・ハウス』
├ 著者:角田光代
├ 出版社:河出書房新社(河出文庫)
└ 価格:473円(税込)
text by モモ
