死臭が画面に漂い出す不気味さ。「黒い家」 / 幻巌堂
HOME > シネマ
巻頭、主人公のトラウマとなった事件をモノクロで見せる。これがラストのヤマ場の伏線となるのだが、ホラーもののつかみとしては悪くないのだが、残念ながらストーリーを盛り上げるほどの効果は生み出せていない。それでも、さまざまな変化球を交えながらも、見せ場ではストレートで押しまくるという巧みなシン・テラの演出が、ホラー映画としての水準を越える作品に仕上げている。トーンを落としたカラーの色調も物語の雰囲気を盛り上げている。
どうしても映画化オリジナルの森田芳光作品と比較してしまうのだが、大竹しのぶが怪物的に描かれるのに対して、韓国版のユ・ソンは人格異常が原作に忠実に描かれていて、ホラー作品という点ではこちらに軍配を上げたい。ただ、最後のどんでん返しは、なんとしてもつじつまが合わない。こんなところで不死身のジェイソンになってしまうのはいかがなものか。
とにかくこのリメイクの成功の要因は、一にも二にもホラーに徹して作り上げたことだろう。役作りのために体重を落としたというファン・ジョンミンは、平凡ながら神経質な新米保険査定員の感じをよく出しているが、それにもまして、悪魔の妻に翻弄される夫を演じるカン・シニルが、下卑た雰囲気を醸しながらも不気味さを漂わせて絶妙だ。また、精神学者の死体、保険会社に雇われるやくざの殺し方なども意表をついてくるし、死体が累々とする地下室などは、悪臭がスクリーンから放たれてくるようだ。「悪魔のいけにえ」を参考にしたのだろうが、まずは美術の勝利だろう。ただ、累々とする死体の説明がほとんどないのが残念なところか。
ホラー映画の鉄則である、突然の恐怖(不意打ち)やエロティックな表現、緊張と緩和の連続などの点でも、この作品は文句なしに水準を越えている。できるなら、シン・テラ監督には今後もホラーにこだわり続けてほしいものだ。


