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湖畔 ハムレット (久生十蘭) / からな

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女というものは誰もみな覗きこんでも底の見えない、深い淵のようなものを一つずつ胸のうちに持っているように思えてならない。
「女の心はわからない」
主水は口のなかで呟いた。
 (「鈴木主水」p137)

講談社文芸文庫。読んだのは2005年12月15日〜20日。
「久生十蘭作品集」と銘打っているように、「湖畔」 「ハムレット」 「玉取物語」 「鈴木主水」 「母子像」 「奥の海」 「呂宋の壺」 の7つの中短編が収められています。

朝日文庫で出た 『十字街』 『魔都』 以来、約10年ぶりに十蘭の作品を読んだので、十蘭独自の感性や、物語の展開の唐突さや奇想天外さ、またそれらを納得させるだけの説得力のある描写に、「懐かしい」と感じたり、「やられた〜!」と叫んだり・・・。
この人は、本当に「物語」を作るのが好きなのだな、読み手を楽しませるのが好きなのだな、と思う。

「けっきょくハムレットの悲劇は、気狂いの妄想でまわりの人間がつぎつぎに犠牲になっていく、『狂気の悲劇』とでもいうようなものなのね」 (「ハムレット」p76)

十蘭の作品を読むコツ・楽しむコツは、ただ一つ。読み手は何の疑問も差し挟まずに、十蘭の繰りだす物語世界に身を委ねるだけ。そうすれば最後には、吃驚仰天するような結末を味わえる(時がある)。
その感覚を味わいたいがために、私は十蘭の作品を読んでいるのだろうと思う。

「恋だとは思えないが、これが恋というものなのか。ひだるさより、いとしさが先に立つというのは、おかしなことだ」 (「奥の海」p170)

私は世に言う「ジュウラニアン」ではない。堂々と名乗れるほど、十蘭の作品を読んでいるわけではない。よくて「隠れジュウラニアン」か「ジュウラニアンの卵」程度だろう。
だけど、これからも新規で文庫が発売されたら、読んでいくだろうことは確実だ。

一発では正しく読めない、「久生十蘭」 という名前が好きなんだと思う。ご本人も大層気に入っているというこのペンネームの持つ魅力と魔力に、既に私は虜になっているのだ。

そして独特の十蘭ワールド。一度それを味わって、その魅力と魔力に相性が合うのなら、「ジュウラニアン」の素質は充分にある。
全作品を読んだわけではないからえらそうなことは言えないが、作品の出来・不出来、完成度の高低は、あるとは思う。だけどそれを凌駕して余りある「何か」が、十蘭の作品にはある。
それを私は知りたい。味わいたい。だから読むのだ。

以下、各々の感想をひと言ふた言添えておく。

「湖畔」 ・・・初っ端から十蘭マジックにやられたわ。この奇想天外さと人間の残酷さ。(←褒めてるのよ) んもう〜!

「ハムレット」・・・これもやられたわ。この登場人物たちのえげつなさ。(←褒めてるのよ) んもう〜!

「玉取物語」・・・男性ならば、このお殿様の苦しみはものすごく解るだろう(苦笑) 淡々とした描写なだけに、余計に際立つ。

「鈴木主水」・・・第二十六回直木賞受賞作。ままならぬ世、ままならぬ男と女の不可思議な恋の道。

「母子像」・・・「ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン」紙主催の、第二回世界短編小説コンクールで、第一席に輝いた作品。主人公・太郎の乾いた雰囲気は、現代の青少年にも相通ずる部分があるように感じる。いや、いつの時代も青少年という存在は、こんな感じなのかもしれない。

「奥の海」・・・何でこの展開からこんな結末に・・・? と叫ばずにいられない。(←褒めてるのよ) このような男性主人公のやるせなさは、「鈴木主水」 にも滲み出ている。いや、他の作品でも共通のものか。

「呂宋の壺」・・・権力者の気まぐれに振り回される人たちの悲しさと愚かしさは、古今東西、不変のものか。

「することなんか、あるわけはない。ぼくには、明日というのがないんだから」 (「母子像」p157)

2006年1月13日(金) at 23:36 / コメント( 0 )/ トラックバック( 1 )
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シェイクスピア「ハムレット」(新潮文庫) / 本の虫

 シェイクスピア「ハムレット」(新潮文庫)を読了。いまさらシェイクスピア、いまさらハムレットと思われるかもしれないが、正真正銘初めて読む。
2006年09月25日(月)   at 17:53

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