芸妓さんの装い / 若旦那
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芸妓さんと聞いて、まず思い浮かべるのは、日本髪を高く結い上げて、裾を引いた姿ではないでしょうか?今では、あんな姿を日常的にするのは芸妓さんだけなんですから、思えば花柳界とは不思議なところですね。
舞妓さんは髪を地毛で結いますが、芸妓さんの日本髪はカツラなんです。我々は濁って「かづら」と呼びます。ですから、日本髪、裾引き姿の芸妓さんをお願いする時は、「今日はかづらで」とか「裾引きで」と申します。
それに対して、髪をアップに結って、普通に着物を着つけた(ちょうど画像のような)姿を、「洋髪(ようはつ)」と呼んでおります。日本髪に対する新しい髪の結い方ということで「洋髪」と呼ぶようになったのでしょうが、こちらも古い言い方ですね。
以前は南でも芸妓さんに出て三年間は、雨が降ろうが風が吹こうが、かづらかぶって、裾を引かなければならなかったのですが、今ではそんなことも言うておられず、お正月や宴会で披露する踊りによっては「かずら」ですが、そうでなければ「洋髪」がほとんどです。
洋髪の着物は、一般に女性がお召しになる着物と変わりませんが、裾引きは、今や花街に残るばかりとなりましたので、少しご説明申しましょうか。
もう間もなく、十二月から二月にかけては、二枚重ね(にまいがさね)を着用します。着物を二枚重ねて着るから「二枚重ね」。昔は今のように暖房も発達していませんでしたから、防寒のためもあり着物を重ねて着ていたんですね。
お正月、元旦から松の内の間は、黒紋付の二枚重ねを着ます。一般でいう留袖にあたり、芸妓さんの正装になります。松の内の間は、頭につける挿し物も特別で、白い鳩が稲穂をくわえた形のかんざしと、その年の干支の挿し物をいたします。この鳩のかんざしを「とりこめ」(鳥と米!)と呼んで、新年最初のお客さまや好きな人に朱で目を入れていただく習慣がございます。
そうして三月から五月にかけて、いわゆる袷(あわせ)の着物になります。これを我々の世界では、二枚重ねに対して「一枚着」と呼びます。五月から六月にかけて、単(ひとえ)になります。二枚重ね、一枚着の裾にある「ふき」が、単の着物からなくなります。「ふき」というのは、裾の周縁ぐるり、裏地を表に返して綿を入れた部分のことです。これは裾がきれいに広がるよう重しの役目を果たすのだろうと思われます。
六月から九月までが、絽(ろ)になります。衣更えをいつするか、いつまで守るか、着物をお召しの方は、悩む所だと思います。南では六月に行われる住吉大社の御田植神事がすめば、絽を着てもよいことになっています。
そして再び、九月から単、十月から一枚着になります。
季節にあわせて、頭の挿し物や、着物の柄が変わってゆきます。
芸妓さんって風流でしょ。
(つづく)
2004年11月16日(火) at 14:01
このエントリ(記事)へのコメント
質問です / 若き駒香ファン
芸妓さんのかづらに裾引き姿、ええもんですね。褄とる姿もあでやかさが増して好きです。
先月、文楽劇場に琉球舞踊を見に行ったんですけど、その時も、日本髪をばっちり決めた芸妓さん(たぶん祇園の御連中?)が思いのほか沢山こられてて、それはそれは華やかなもんで、幕間の休憩も良い目の保養をいたしました
。
帰り際、芸妓さんが二人連れあって地下鉄に乗ってきはった時には、ちょっとビックリしましたが、気合いが入ってて、さすが!とも思いました。
ところで、洋髪に普通の着物を着た芸妓さんていうのは、街角で出合ったとき、パッと見て分かるもんですか?
やっぱり装いの雰囲気の違いとかで分かるのかな…。
ちょっと気になったもので。
先月、文楽劇場に琉球舞踊を見に行ったんですけど、その時も、日本髪をばっちり決めた芸妓さん(たぶん祇園の御連中?)が思いのほか沢山こられてて、それはそれは華やかなもんで、幕間の休憩も良い目の保養をいたしました
帰り際、芸妓さんが二人連れあって地下鉄に乗ってきはった時には、ちょっとビックリしましたが、気合いが入ってて、さすが!とも思いました。
ところで、洋髪に普通の着物を着た芸妓さんていうのは、街角で出合ったとき、パッと見て分かるもんですか?
やっぱり装いの雰囲気の違いとかで分かるのかな…。
ちょっと気になったもので。
2004年11月17日(水) at 3:28
わかる、かな? / 谷川恵 URL
コメントありがとうございます。
こうして見ると、たしかに迫力ですね。
なんだか恥ずかしいような。
若き駒香ファンさんは、
先日の国立文楽劇場での琉球舞踊の会に行ってこられたんですね。
私も見たかったんですが、都合がつかず残念に思っておりました。
よろしければ、感想をお聴かせください。
その会に井上八千代さんが出演されていましたから、
日本髪は祇園のご連中でしょう。
洋髪の芸妓さんを街で見かけて、わかるか?
というご質問ですが、
わかる人にはわかる、としかお答えできませんねぇ。
この質問で思い出したことが二つあります。
参考になるか、わかりませんが、ご紹介します。
新派に『夢の女』という演目があります。
明治時代の花魁が主人公で、
近年では玉三郎さんがよく演じていらっしゃいますが、
お芝居の冒頭、新橋駅の場面の台詞を思い出しました。
素人の奥様風に身をやつした花魁が、子供を預けた婆やに会いにくるのですが、
花魁を見かけた男が、次のようなことを言うんです。
「ああして奥様風にはしているが、あれは売り物、買い物。洲崎の花魁さ」
当時の差別を思うとともに、
わかるものなのかなぁ、と印象に残っています。
昔ほど、素人と玄人の区別は歴然としておりましたからね。
もう一つは、
若旦那の大学時代。
若旦那は美学を専攻していたのですが、
日本美術史で美人画を研究している女の子が画集を持ってきて、
描かれている女性は、芸妓さんか?舞妓さんか?
と聞くのです。
答えると、
画中の女性が、花魁か、芸妓か、舞妓か、どう区別するのか?
と、さらに尋ねるのです。
若旦那は返答に困ってしまいました。
実際、展覧会の図録やものの本を見ていますと、
その辺りの区別は時にいい加減なことがあります。
実感がないのでしょうから、
しょうがないといえば、しようがないのですが。
一度、本物を見て接すると、
なんとなくわかるかもしれませんよ。
こうして見ると、たしかに迫力ですね。
なんだか恥ずかしいような。
若き駒香ファンさんは、
先日の国立文楽劇場での琉球舞踊の会に行ってこられたんですね。
私も見たかったんですが、都合がつかず残念に思っておりました。
よろしければ、感想をお聴かせください。
その会に井上八千代さんが出演されていましたから、
日本髪は祇園のご連中でしょう。
洋髪の芸妓さんを街で見かけて、わかるか?
というご質問ですが、
わかる人にはわかる、としかお答えできませんねぇ。
この質問で思い出したことが二つあります。
参考になるか、わかりませんが、ご紹介します。
新派に『夢の女』という演目があります。
明治時代の花魁が主人公で、
近年では玉三郎さんがよく演じていらっしゃいますが、
お芝居の冒頭、新橋駅の場面の台詞を思い出しました。
素人の奥様風に身をやつした花魁が、子供を預けた婆やに会いにくるのですが、
花魁を見かけた男が、次のようなことを言うんです。
「ああして奥様風にはしているが、あれは売り物、買い物。洲崎の花魁さ」
当時の差別を思うとともに、
わかるものなのかなぁ、と印象に残っています。
昔ほど、素人と玄人の区別は歴然としておりましたからね。
もう一つは、
若旦那の大学時代。
若旦那は美学を専攻していたのですが、
日本美術史で美人画を研究している女の子が画集を持ってきて、
描かれている女性は、芸妓さんか?舞妓さんか?
と聞くのです。
答えると、
画中の女性が、花魁か、芸妓か、舞妓か、どう区別するのか?
と、さらに尋ねるのです。
若旦那は返答に困ってしまいました。
実際、展覧会の図録やものの本を見ていますと、
その辺りの区別は時にいい加減なことがあります。
実感がないのでしょうから、
しょうがないといえば、しようがないのですが。
一度、本物を見て接すると、
なんとなくわかるかもしれませんよ。
2004年11月17日(水) at 22:14
琉球舞踊の会 / 若き駒香ファン
国立文楽劇場であった「名流舞踊鑑賞会─琉球舞踊と上方舞踊」は、もう一月近く前になるので、印象はたぶん以前よりも薄らいできているんですけど、若旦さんのご所望に応じて、ちょっと書留めておきたいと思います。
ぼくは第1部(昼の部)の琉球舞踊の会
を見ました。琉球舞踊は、これまでもいくつかの催しで見たことはありましたが、一度にたくさんの舞踊をたっぷりと見るのは初めてで、しかも前から7列目中央の席で見られたので、かぶり付き状態
で舞を拝見しました。
演目は、女踊「稲真積」・女踊「伊野波節」・雑踊「鳩間節」・雑踊「花風」・二才踊「高平良万歳」・女踊「柳」・雑踊「むんじゅる」・雑踊「加那よー天川」が続き、中入り後に井上八千代さんの京舞「葵上」があって、また休憩した後に、組踊の「女物狂」がありました。
それぞれの舞踊については、沖縄県がつくっている伝統文化のサイト「沖縄デジタルアーカイブ Wonder沖縄」がかなり面白いので、これをおすすめします。(上方でもこういうの、あればいいんですけど…)
http://www.wonder-okinawa.jp/jp/index3.jsp
個人的にとくに面白かったのは、琉球の女舞と上方の女舞である京舞をおなじ舞台で比較できたことでした。
双方の舞には、もちろん動き方の違いはありますが、鑑賞するひとつのポイントになったがどちらも「顔」でした。それも無表情の「顔」。
双方の舞とも、舞踊の中でも動作がゆっくりしているのが特徴ですが、舞を見ていると、もちろん舞の所作や衣裳の美しさ、その着こなしも美しくてウットリするのですが、じっと見ていると、その視線がどんどんどんどん顔に吸い寄せられていくんです。
これはとくに、琉球の女舞がスローモーションのようにゆっくりしているからでしょうが、身体の動きも衣裳もじっくりみるのと同じように顔もじっくり見られるのです。そのことで、顔を見つめてしまって、喜びにも憂いにも見える表情にドキドキしたりも
するんですね。
あーこれは、えらいもんやぁ…と思ったのですが、こういう感覚って、なかなか伝わらないかもしれません。テレビでも伝わりにくい。やはり生の舞台だから伝わることだと思います。立ち方の無表情のなかに多様なイメージがひろがる雰囲気は、琉球舞踊も京舞も近いな、と思いました。
能の直面もきっと同じような効果があるのでしょう。
また、女舞の衣裳である紅型の色が、黄色に桃色にしても全然ケバくなくて、とっても上品な良い色をしていたのが、印象に残っています。
また、明治以降に創作された雑踊になると、雰囲気はまた一変して、立ち方の表情も明るく力強い感じ
。見ている側もうきうきと、踊りの楽しさが伝わってきて、お客さんの中にも手拍子をする人がおられました。
雑踊の「鳩間節」は、江戸の「かっぽれ」の影響をがあると解説にありましたが、たしかに手踊りの細かい振りなんかは、江戸の浮かれた面白みがありました。
それから組踊の「女物狂」も、ミュージカルとしてとても面白かったのですが、長くなってきたので、ここでは割愛します。いずれにしろ、とっても華やかな(観覧席の芸妓さんも含む)雰囲気を満喫できる会でした。
当日は、NHKの取材も入っていたので、そのうちテレビで放映するかもしれません。行きそびれた方は、それをお待ちになるのも良いのではないでしょうか。
とりあえずこんな感じで、またまた長文ですいません
。
わかこま
ぼくは第1部(昼の部)の琉球舞踊の会
演目は、女踊「稲真積」・女踊「伊野波節」・雑踊「鳩間節」・雑踊「花風」・二才踊「高平良万歳」・女踊「柳」・雑踊「むんじゅる」・雑踊「加那よー天川」が続き、中入り後に井上八千代さんの京舞「葵上」があって、また休憩した後に、組踊の「女物狂」がありました。
それぞれの舞踊については、沖縄県がつくっている伝統文化のサイト「沖縄デジタルアーカイブ Wonder沖縄」がかなり面白いので、これをおすすめします。(上方でもこういうの、あればいいんですけど…)
http://www.wonder-okinawa.jp/jp/index3.jsp
個人的にとくに面白かったのは、琉球の女舞と上方の女舞である京舞をおなじ舞台で比較できたことでした。
双方の舞には、もちろん動き方の違いはありますが、鑑賞するひとつのポイントになったがどちらも「顔」でした。それも無表情の「顔」。
双方の舞とも、舞踊の中でも動作がゆっくりしているのが特徴ですが、舞を見ていると、もちろん舞の所作や衣裳の美しさ、その着こなしも美しくてウットリするのですが、じっと見ていると、その視線がどんどんどんどん顔に吸い寄せられていくんです。
これはとくに、琉球の女舞がスローモーションのようにゆっくりしているからでしょうが、身体の動きも衣裳もじっくりみるのと同じように顔もじっくり見られるのです。そのことで、顔を見つめてしまって、喜びにも憂いにも見える表情にドキドキしたりも
あーこれは、えらいもんやぁ…と思ったのですが、こういう感覚って、なかなか伝わらないかもしれません。テレビでも伝わりにくい。やはり生の舞台だから伝わることだと思います。立ち方の無表情のなかに多様なイメージがひろがる雰囲気は、琉球舞踊も京舞も近いな、と思いました。
能の直面もきっと同じような効果があるのでしょう。
また、女舞の衣裳である紅型の色が、黄色に桃色にしても全然ケバくなくて、とっても上品な良い色をしていたのが、印象に残っています。
また、明治以降に創作された雑踊になると、雰囲気はまた一変して、立ち方の表情も明るく力強い感じ
雑踊の「鳩間節」は、江戸の「かっぽれ」の影響をがあると解説にありましたが、たしかに手踊りの細かい振りなんかは、江戸の浮かれた面白みがありました。
それから組踊の「女物狂」も、ミュージカルとしてとても面白かったのですが、長くなってきたので、ここでは割愛します。いずれにしろ、とっても華やかな(観覧席の芸妓さんも含む)雰囲気を満喫できる会でした。
当日は、NHKの取材も入っていたので、そのうちテレビで放映するかもしれません。行きそびれた方は、それをお待ちになるのも良いのではないでしょうか。
とりあえずこんな感じで、またまた長文ですいません
わかこま
2004年11月20日(土) at 13:07
おおきに。 / 谷川恵 URL
若駒さん(って、しこ名か芸名のよう?!)、
長文のコメントおおきに。
琉球舞踊の会に行けませんでしたが、
こうしてコメントをお寄せいただいて、
素敵な催しだったことが伝わってまいりました。
「沖縄デジタルアーカイブ Wonder沖縄」は知りませんでした。
こういうサイトもあるんですね。
上方も頑張らんと、あきませんねぇ。
いつも思い出ばかりで恐縮ですが、
「紅型の色がけばけばしくなかった」という一節から、
京劇の『貴妃酔酒』を思い出しました。
玄宗皇帝のお渡りのない憂さ晴らしに
楊貴妃は次々と杯を空けていくのですが、
やがて酒に酔った楊貴妃は侍女を左右に従え、一列に肩を組んで、
右に左によろめくという場面があるんです。
それまできつく思えた京劇の衣装ですが、
それはやはり計算されたもので、
楊貴妃を中心に侍女が並ぶと、
実に見事な取り合わせで、このためだったか、と感心したことがあります。
異なる文化に触れると、
これまで知らなかった美意識に気づかされますね。
長文のコメントおおきに。
琉球舞踊の会に行けませんでしたが、
こうしてコメントをお寄せいただいて、
素敵な催しだったことが伝わってまいりました。
「沖縄デジタルアーカイブ Wonder沖縄」は知りませんでした。
こういうサイトもあるんですね。
上方も頑張らんと、あきませんねぇ。
いつも思い出ばかりで恐縮ですが、
「紅型の色がけばけばしくなかった」という一節から、
京劇の『貴妃酔酒』を思い出しました。
玄宗皇帝のお渡りのない憂さ晴らしに
楊貴妃は次々と杯を空けていくのですが、
やがて酒に酔った楊貴妃は侍女を左右に従え、一列に肩を組んで、
右に左によろめくという場面があるんです。
それまできつく思えた京劇の衣装ですが、
それはやはり計算されたもので、
楊貴妃を中心に侍女が並ぶと、
実に見事な取り合わせで、このためだったか、と感心したことがあります。
異なる文化に触れると、
これまで知らなかった美意識に気づかされますね。



