「お登勢」 前進座 / 村をんな
ニュース・芸能 > 前進座
観劇日…2005年2月26日
劇場…国立文楽劇場
「お登勢」は船山馨原作で、数年前にはNHK金曜時代劇で沢口靖子を主演に放映された作品です。
幕末の徳島藩藩士と淡路島・洲本城の城代家老稲田家家来の間には永年に渡る確執があったのです。徳島藩直属の藩士は白足袋をはけるのですが、洲本の稲田家家来は徳島藩直属の藩士ではないため「またざむらい」と蔑まれ、浅葱色(あさぎいろ、今で言う水色)の足袋しか許されず陰で「浅葱者」と呼ばれていました。
両者の確執は、幕末という時代の流れに飲み込まれます。今までの体制を守ろうとする徳島藩は徳川方に付き、「またざむらい」の地位から脱却し独立を模索する稲田家は朝廷方に付くのです。
徳島藩士で洲本吟味役の加納家の娘・志津と稲田家家臣の津田家の息子・貢、そして田舎娘で加納家に女中として奉公しているお登勢の3人を中心に物語は進んでいきます。
テレビで放映されているときに、原作を読んだのですが、歴史の陰に埋もれているとはいえ幕末の徳島・淡路島から北海道開拓にまで至る大変スケールの大きな作品で、どのように舞台化するのだろうかと興味を持って見ました。が、残念ながら加納家と津田家の家庭内の物語という形になってしまっていたのではないでしょうか。確かに津田貢と加納志津の婚礼の日に徳島藩士たちに浅葱色の足袋をはかせた犬の死骸を持ち込まれる場面など象徴的な場面もありましたが、全体的に一触即発の危機感が希薄な感じがしました。
また貢と志津とお登勢の三角関係があり、その上に貢とお登勢と志津の兄・睦太郎の三角関係もあったのですが、前者に力点がおかれていたために、お登勢が睦太郎に切られる理由付け程度に、睦太郎がお登勢に恋心を告白するシーンが付けられたような気がしました。
そしてラストは貢と傷ついたお登勢が北海道へ新天地を求めて移住する決意をするところで終わりました。原作では北海道へ渡った後、命を懸けた開拓の苦労話が続き、「お登勢」は北海道へ移住してからが、物語の核心となるのです。
原作もパンフレットも読んでいない観客にどれだけこの作品の本質を伝えることができているのか、疑問に思ってしまいました。
この芝居には2体の木偶人形が登場します。文楽と同様で3人遣いなのですが、この人形を操っていたのが前進座の役者さんたちでした。文楽人形遣いの修行の長さから考えると、短期間でよくもまぁこれほどまでにと思うほど、巧かったように思います。
BGMは義太夫だけのシンプルなもので、前進座の新作物としては珍しく感じました。
「お登勢」のタイトルロールを抜擢されて演じた浜名実貴の若さ・初々しさが前評判通りで、お登勢の一途さが素直に表現されていたようで、この重々しい芝居に花を添えていたのではないでしょうか。
劇場…国立文楽劇場
「お登勢」は船山馨原作で、数年前にはNHK金曜時代劇で沢口靖子を主演に放映された作品です。
幕末の徳島藩藩士と淡路島・洲本城の城代家老稲田家家来の間には永年に渡る確執があったのです。徳島藩直属の藩士は白足袋をはけるのですが、洲本の稲田家家来は徳島藩直属の藩士ではないため「またざむらい」と蔑まれ、浅葱色(あさぎいろ、今で言う水色)の足袋しか許されず陰で「浅葱者」と呼ばれていました。
両者の確執は、幕末という時代の流れに飲み込まれます。今までの体制を守ろうとする徳島藩は徳川方に付き、「またざむらい」の地位から脱却し独立を模索する稲田家は朝廷方に付くのです。
徳島藩士で洲本吟味役の加納家の娘・志津と稲田家家臣の津田家の息子・貢、そして田舎娘で加納家に女中として奉公しているお登勢の3人を中心に物語は進んでいきます。
テレビで放映されているときに、原作を読んだのですが、歴史の陰に埋もれているとはいえ幕末の徳島・淡路島から北海道開拓にまで至る大変スケールの大きな作品で、どのように舞台化するのだろうかと興味を持って見ました。が、残念ながら加納家と津田家の家庭内の物語という形になってしまっていたのではないでしょうか。確かに津田貢と加納志津の婚礼の日に徳島藩士たちに浅葱色の足袋をはかせた犬の死骸を持ち込まれる場面など象徴的な場面もありましたが、全体的に一触即発の危機感が希薄な感じがしました。
また貢と志津とお登勢の三角関係があり、その上に貢とお登勢と志津の兄・睦太郎の三角関係もあったのですが、前者に力点がおかれていたために、お登勢が睦太郎に切られる理由付け程度に、睦太郎がお登勢に恋心を告白するシーンが付けられたような気がしました。
そしてラストは貢と傷ついたお登勢が北海道へ新天地を求めて移住する決意をするところで終わりました。原作では北海道へ渡った後、命を懸けた開拓の苦労話が続き、「お登勢」は北海道へ移住してからが、物語の核心となるのです。
原作もパンフレットも読んでいない観客にどれだけこの作品の本質を伝えることができているのか、疑問に思ってしまいました。
この芝居には2体の木偶人形が登場します。文楽と同様で3人遣いなのですが、この人形を操っていたのが前進座の役者さんたちでした。文楽人形遣いの修行の長さから考えると、短期間でよくもまぁこれほどまでにと思うほど、巧かったように思います。
BGMは義太夫だけのシンプルなもので、前進座の新作物としては珍しく感じました。
「お登勢」のタイトルロールを抜擢されて演じた浜名実貴の若さ・初々しさが前評判通りで、お登勢の一途さが素直に表現されていたようで、この重々しい芝居に花を添えていたのではないでしょうか。


