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「壽初春大歌舞伎 昼の部」 / 村をんな

ニュース・芸能 > 歌舞伎
観劇日…2006年1月16日
劇場…大阪松竹座


 2006年の初春大歌舞伎昼の部は「源平布引滝」より「義賢最期」と「花街模様薊色縫」より「十六夜清心」の2本立てでした。

 「義賢最期」の幕が開くと葵御前と待宵姫が奥女中を侍らせて語り合っているところからだったのですが、とても華やかでお正月らしく、歌舞伎を見に来たなぁと言う感じになりました。
 源義朝が亡くなったあと、平家方に与していた義賢は、病と称して館に引きこもってました。義朝が亡くなったときに一緒にあるはずの白旗が紛失していたことで、義賢が疑われ、平清盛の使者が白旗探索に送り込まれてきます。使者の一人を討ちもらしたため、義賢が源氏方であったことがばれ、義賢館が平家の軍勢に囲まれ、義賢は壮絶に討ち死にしていきます。
 
 義賢役を、初役の愛之助が演じました。義賢は待宵姫という大きな娘のいる役であり、40歳〜50歳台くらいの役者さんが演ずべき役だと思うので、前半はかなり押さえた演技だったようにみえました。愛之助さんの演技が熱を帯びてくる後半、特に進野次郎に後ろから取り押さえられ、その進野と共々に自刃したところから最期の「仏倒し」で落ち入るところまで、目を見張る思いがしました。
 今年がたまたま坂田藤十郎襲名披露で主な役者が東京に集中してしまったという特別な事情があったとはいえ、若手の勉強公演の主役からステップアップし、初芝居のトップバッターとして何の遜色もない演技を愛之助さんはなさっていたのではないでしょうか。

 「十六夜清心」が始まる前、松竹座の廊下をうろうろしていたら、写真家の篠山紀信さんご一行の姿をお見かけしました。たぶん玉三郎さんの舞台姿を撮りに来られていたのだと思います。となるといつもよりまして舞台に力が入るだろうと私のますます期待も高まりました。
 仁左衛門・玉三郎の「十六夜清心」は関西初登場とのこと。河竹黙阿弥の作品は東京に比べれば、関西での上演は数が限られていると思います。私自身も「白浪五人男」位しか見たことはありません。
 
 遊女十六夜と深い仲になった清心は、女犯の罪で寺を追い出されてしまいます。廓を抜け出た十六夜と共に川に身投げします。ところが十六夜は川に流され、川遊びをしていた白蓮に助けられます。
 一方千葉の漁村出身の清心も、泳ぎが得意だったため死ぬことができませんでした。川の側に佇んでいるところに通りがかった小姓が癪を起こしたので介抱しているときに、小姓が懐に五十両持っていることに気がつきます。そこでその金を貸せというのですが、もちろん小姓がそんなことに耳を貸すわけはありません。もみ合ううちに清心は小姓を殺してしまい、一瞬死のうと思うのですが、ふと我に返り、人一人を殺したらもう他にどんな悪事を働こうとも怖くないと開き直ってしまいました。
 一方白蓮に助けられた十六夜は、白蓮の妾となって暮らしているのですが、そこに僧の姿をした父親が尋ねてきます。そして尼になり白蓮の女房と兄弟の契りをして、清心の菩提を弔うために十六夜は巡礼の旅に出ます。
 次の場面、巡礼の旅に出ていたはずの十六夜は、散切り頭の伝法な女になって、白蓮の家に現れます。そして連れも一緒に泊めて欲しいと連れてくるのですが、それが鬼薊の清吉と名前を変えた清心でした。
 十六夜と清吉は白蓮が十六夜を妾にしていたことで強請り始めます。そのため白蓮は自分の持ち金二百両を与えるのですが、金包みを見て、その金が清吉がもといた寺のご用金で盗まれた物と判ります。清吉は表向きは女犯の罪で寺を追われたことになっていたのですが、実はご用金が盗まれたことの責任を取らされたものだったのです。
 このことで白蓮は大盗賊であることがばれてしまうのです。ところが最後には白蓮が清吉の実の兄であることが発覚します。

 このどんでん返しを見て最初の印象は「やっぱり河竹黙阿弥らしい話やな」ということでした。因果応報で繋がる兄弟の話。そしてもう一つの印象は歌舞伎名作案内(演劇界増刊)の解説に『「強請場」は黙阿弥が与三郎と蝙蝠安を頭に置いて書いたといわれる。』ように「与話情浮名横櫛」(いわゆる「お富さん」)のようでもあり、一人の女が流転していくところから玉三郎の当たり狂言「櫻姫東文章」のようでもありました。

 清心は絵に描いたような「色男、金と力はなかりけり」という男。死んだと思い込んでいる十六夜と腹の子の供養にと見ず知らずの他人に金を貸してくれと頼むこと自体、考えがゆがんでいるではないですか。鬼薊の清吉と悪ぶってはいても、結局十六夜のつてを頼って強請をしかけてくるのですから、小悪党にしかなれない男ではないでしょうか。
 この清心を演じた仁左衛門さんは柔らかみがあるので、上方の色男とはまた違った一面を見せてくださいました。ただ清心という役柄の性格上、十六夜の引き立て役という面もなきにしもあらずかなという気もしたのですが。

 十六夜は、可憐な遊女から、小粋な女房、尼僧、そしていがぐり頭の伝法な女と境遇が替わるごとに、姿態も言葉遣いも代わり、玉三郎さんの魅力を楽しませてもらいました。

 川で溺れそうな十六夜を助けた釣り船の船頭を板東薪車さんが演じておられましたが、さすが東京出身だけのことはあって、いなせな立ち居振る舞いに、こういう味は勉強だけではでないよなぁと感じました。

 昼の部だけしか拝見しませんでしたが、中堅の役者さん達が出ずっぱりの活力溢れる舞台に満足させていただきました。
2006年2月10日(金) at 22:16 / コメント( 0 )/ トラックバック( 0 )
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