「俺たちは志士じゃない」 / 村をんな
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観劇日…2006年7月15日
劇場…新神戸オリエンタル劇場
演劇集団キャラメルボックスが演出にマキノノゾミさん、青年座の大家仁志さん、文学座の浅野雅博さん、アクションクラブの武田浩二さんを迎えて、3演目になる「俺たちは志士じゃない」を上演しました。
浅野さんが出演しておられるとのことで、初めてキャラメルボックスを見ることになりました。キャラメルボックスに文学座の俳優が出ること自体が、全く初めてとのこと。劇場中がほぼキャラメルファンなのでしょうが、こういうきっかけで初めての劇団を見る私もいれば、初めて文学座の俳優の芝居を見る観客もいるのだなと思いました。
幕末の京都、老舗のへそ饅頭屋に岩国藩士・鶴橋清之助が二人の浪人者を連れて逃げ込んできます。この店は岩国藩と縁が深く、今までも頼まれて土蔵に勤皇の志士を匿ってきたことがありました。しかし土蔵には先客がいました。家老の娘・天王寺美咲。最初美咲は鶴橋が連れてきた浪人者を偽者ではないかと疑っていたのですが、浪人者が持っていた短銃ですっかり二人を坂本龍馬・中岡慎太郎と信じ込み、京都藩邸にいる兄・天王寺創一郎の元に知らせに行きます。
実はこの二人、江戸の町人(大工の息子とか)だったのですが、武士になれるという言葉につられて新選組に入隊し、京都に来ていたのでした。そして新選組の仕事に嫌気がさして逃げ出し、たまたま入った旅館の風呂場に置いてあった着物に着替えて隠れていた所を、鶴橋に見つけられたのでした。
こうして転がり込んだ饅頭屋の土蔵に、岩国藩の天王寺創一郎がやってきます。天王寺は北辰流で龍馬の後輩にだったのですが、その彼の目も何とかごまかし、正式に岩国藩に匿われることになった松吉と竹次郎でした。
そこへ物乞いに身をやつした桂小五郎が現れます。桂は一目でこの二人を偽者と見破るのでしたが、彼らの前では自分も偽者であると嘘をつくのでした。
この饅頭屋に浪人者が逃げ込んだと言う情報や、度々岩国藩の人間が訪れていることから、新選組の土方や沖田が怪しいと偵察に現れます。一旦は窮地を逃れることもできたのですが、かえって新選組にマークされることになってしまったのです。
実は桂小五郎はそれを利用したのでした。薩長同盟に向けて桂と相談するために京都に来ていた龍馬と中岡がたまたま風呂に入っていたときに松吉達に着物を盗まれていたのでした。新選組に松吉と竹次郎を見張らせることによって、裏で本物の龍馬と中岡を逃がし、桂たちの計画は着々と進んでいたのでした。
饅頭屋に新選組の御用改めが行われ、土方と沖田が踏み込んで大立ち回りが始まります。松吉と竹次郎は元新選組隊士であったことまでばれ、危機一髪となったところで、薩摩の軍勢が加勢に来るとの情報が流れ、新選組は引き上げ松吉や竹次郎は助かりました。
何事も無かったように夜が明け、竹次郎は岩国藩内に立ち上げることになった必死組に参加するために出て行きます。残った松吉は江戸に戻って大工になる道を選ぶのでした。
坂本龍馬に間違えられた元新選組隊士・松吉役の浅野雅博さんは、江戸っ子で大工の息子であるという性根をきっちり押さえていたのが、良かったのではないでしょうか。ちらっと江戸っ子弁も出てきてましたし、その性根があったからこそ、将軍の命令という大義名分の元、平然と人殺しを行っている新選組の真の姿を浮かび上がらせていたと思いました。必死組を設立しようと提出した建白書を破り捨てられ脱藩しようとした鶴橋や梅田たちを必死で止めようとしている姿に、人間同士が殺しあう悲惨さを体験した辛さがひしひしと伝わってきました。
お金が無くて、酒と女に目がない松吉。でも人間に対する優しさがあるから、勤皇の志士側のシンパで桂に身の回りの世話を頼まれていた料理屋の仲居かえでが松吉に付いていこうとしたんだなと思いました。
岩国藩京都藩邸に勤務している天王寺創一郎役に大家仁志さん。落ち着きのある物腰に、岩国藩から動乱の京都に派遣されている人物だけのことはあると思いました。どことなく青年座の津賀山正種さんに雰囲気が似ているなと思いました。
松吉とともに新選組を抜け出して中岡慎太郎に間違えられる竹次郎役に細見大輔さん。松吉が人間の本能のまま生きているとすれば、竹次郎は「万国公法」を読んでみようと努力し、最後には必死組に参加し本物の志士になることを決意します。自分たちが巻き込まれた状態を冷静に見詰めているようで、その実熱い男を演じておられました。
鶴橋は子供の頃から勉強はできたのですが、運動がからきし駄目で、勤皇の志士になるために若武者の格好で京都にまでやってきてしまうような許婚の美咲の目には男性としての魅力が感じられず、かえって避けられていたのでした。藩士としての立場と美咲への思いに揺れる鶴橋清之助役に左東広之さん。いわゆる辛抱役になると思うのですが、不器用ながら人のために尽くそうとする鶴橋の姿に胸が熱くなってしまいました。
新選組の土方役は武田浩二さん。屋根から飛び降りるシーンなど見せ場もたっぷりで、特に最後の大立ち回り、見得の形の美しさに見入ってしまいました。
桂小五郎役は西川浩幸さん。初め登場された時には、まさか裏でそんな画策をする策士のようには見えませんでした。見えないからこそ策士だといえるのでしょうが、さすがベテランの力量、ぬい役の坂口さん共々安心して拝見しました。
沖田役は多田直人さん。私が持つ沖田のイメージ通りだったと思いました。ここで咳き込むシーンが欲しいよなと思ったところで咳き込んだのはおかしかったかな。
饅頭屋の女中頭・ぬい役は坂口理恵さん。全てを知っているのに、抜け目無く立ち回ってちゃっかりお小遣いをせしめてるぬい。手練な感じが見てて楽しかったです。最後の最後に赤い忍者衣装で出てこられたのですが、さもあらんって感じがしました。さて誰に雇われている忍者だったのでしょうか。
もう一人饅頭屋の女中・こま役は渡邊安理さん。実は私の笑いのツボにはまったのはこまでした。ちょっとぼーっとしていて、ピントはずれなことを言ってはぬいに怒られているという役だったのですが、それが昔松竹新喜劇にいた月城小夜子を思い出させるような感じだったからかもしれません。
料理屋の仲居・かえで役は温井摩耶さん。シュッとした美人で気風もいいので、セリフは京ことばでも京美人というよりも江戸っ子の雰囲気がありました。その辺にちょっと違和感はありましたが、松吉に何度口説かれても上手くはぐらかしながら、最後には松吉と一緒に江戸に行こうとするツンデレなところがかっこよかったです。
岩国藩家老の娘・美咲役は實川貴美子さん。世間の流行に浮かれて勤皇の志士気取りのじゃじゃ馬娘を演じておられました。若武者のカッコをしているからかちょっと声を低めに作っておられたように思ったのですが、そこまでしなくてもよかったのではないでしょうか。
2006年7月25日(火) at 22:23 / コメント( 0 )/ トラックバック( 0 )
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