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「染模様恩愛御書 細川の男敵討」 / 村をんな

ニュース・芸能 > 歌舞伎
観劇日…2006年10月15日
劇場…大阪松竹座


 明治22年市村座で初演された三世河竹新七作「蔦模様血染御書」を現代向けにアレンジ。セットも回り舞台の幅いっぱいに作られた大道具(片面には2本の階段が取り付けてあり、もう片面は部屋の壁のような作りにしてあって、場所の設定により、壁面を替えるように作ってある)を回すことによって舞台転換を図る現代劇的なものでした。

 西国出身の浪人だった横山図書(市川猿弥)は、剣術の腕を認められて某藩の剣術指南役となり、殿のお声がかりで重臣の娘・いよ(中村芝のぶ)を妻に迎えていました。いよは藩中の若者の憧れの的であったため、そのことも妬みの原因となり、いつか横山図書を陥れようと若者たちは狙っていました。
 横山図書は刀研ぎの久兵衛からサダノブの銘のある刀を勧められていました。刀に詳しい舅に目利きを頼んでいた図書は、妖刀の気配がすると購入を反対されました。しかし酒席に同席していた者達に勧められ、つい購入してしまいます。そして妻に間男がいると吹き込まれてしまったのでした。

 酒に酔っ払って家に帰ってきた図書は、いよに間男がいるのかと問い詰めます。いよは図書との気の進まぬ結婚のため、精神的に体調を崩し、夫の図書に肌を許していなかったのです。そのことが図書に間男がいると疑われる原因となってしまったのでした。酒の酔いと妖刀によって、いよは斬られてしまいました。たまたまその現場に、来合わせてしまった印南十内(坂東薪車)は、間男の濡れ衣を着せられ殺されてしまいます。
 
 10年後、浅草寺に参拝するために来ていた印南数馬(十内の息子・片岡愛之助)の美しい若衆姿に、大川友右衛門は一目惚れしてしまいます。また数馬も友右衛門のことが忘れられなくなるのでした。
 数馬は父が間男の汚名を受けて死んだため、浅草寺で僧侶をしている親戚の世話で寺小姓をしていたのですが、細川候の目に留まり、小姓に取り立てられていたのでした。

 数馬が細川候お抱えと知った友右衛門は、侍であった身分を捨て細川家の中間になり、働きを認められ侍格に取り立てられました。そして数馬に再会し自分の気持ちを込めた恋歌を送ります。友右衛門の気持ちを知った数馬も惹かれていきます。
 しかし、数馬に恋心を抱いていた腰元あざみ(市川春猿)は恋歌を書いた短冊を拾ってしまい、数馬の恋の相手を探ろうとします。そんな時、数馬は病気を理由に勤めを休み、友右衛門を部屋に誘います。この二人は恋を成就し、互いの腕を傷つけて相手の血を舐め義兄弟の契りを交わします。そこで数馬は自分には親の仇がいることを打ち明け、友右衛門に助太刀を願います。
 
 その様子を伺っていたあざみは不義者としてこの二人を殿に訴え出るのでした。友右衛門を長持に隠し、殿の前に引き出された数馬は知らぬ存ぜぬを通そうとするのですが、長持の中から友右衛門が引き出され、腕の傷を見られてしまいます。ただ、あざみが思っていたのとは違い、細川候(市川段治郎)はこの二人を許します。

 十内といよを斬ったあと、図書は他藩に仕官し印南図書と名乗っていました。そしていよとそっくりのきくという女を妻にしていました。しかしきくは友右衛門の妹で、久しぶりにきくと会った友右衛門は妹の話から、彼女の夫が数馬の仇であることを知ります。こうして図書に巡り合った数馬と友右衛門は無事親の仇を果たします。

 遂げられなかった恋の恨みを晴らそうとしてあざみは火の付いた矢を放ちます。が、誤って建物に引火した火はみるみる広がり、細川候が徳川家康から下賜された朱印状の納められている土蔵にまで及んでしまいました。
 数馬との恋を認めてくれた細川候への義理を立てるため友右衛門は火の中に飛び込み朱印状を持ち出そうとするのですが、火の勢いは激しく、自分の腹を割いてその中に朱印状を入れ、自らの死をもって守ろうとしたのでした。

 火事が鎮火し友右衛門の死体が見つかり、腹の中から朱印状が取り出されました。数馬は恋人の死を悼み、杜若の花束を抱きながら悲嘆にくれるところで幕が下りました。

 今回の作品は、最近サブカルチャー界で人気のボーイズラヴに焦点を当て、大劇場での1ヶ月公演としては冒険だったのではないでしょうか。観客の9割以上はBLとは無縁の生活をしており、若手俳優の新作歌舞伎を見に来ていたのだと思います。そう感じたのは友右衛門と数馬のラブシーンでは劇場全体で失笑が起きていたからです。果たしてこういう世界観が一般の歌舞伎ファンに受け入れられて再演されるのか、気に掛かるところです。再演するのであれば東京だと池袋サンシャイン劇場辺りを使用すれば、BLの本場なので面白いかもしれませんが。

 染五郎さん・21世紀歌舞伎組の皆さん・愛之助さん・薪車さんなど、新作歌舞伎に慣れておられるし、殺陣もスピードがあり、抽象的な大道具にも自然と馴染んで、無理なく拝見できました。ただ、私は普段こってりした上方歌舞伎を中心に見ているので、歌舞伎を見たという満足感が薄かったように感じました。
 それに時間も短かったので、宝塚のように一度幕が閉まった後でも、今回のお芝居をモチーフにした踊りをつけても良かったのではないでしょうか。
 村をんなの日常にも簡単な感想が、それはこちら
 
2006年10月28日(土) at 21:52