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「シラノ・ド・ベルジュラック」 / 村をんな

ニュース・芸能 > ストレートプレイ
観劇日…2006年11月3日
劇場…兵庫県立芸術文化センター


 文学座創立70周年記念として上演された「シラノ・ド・ベルジュラック」
17世紀フランスに実在したシラノをモデルに1897年にエドモン・ロスタンが書き上げた戯曲。日本語訳は辰野隆・鈴木信太郎によるものを使用しておられました。

 芝居はパリの芝居小屋から始まります。田舎から出てきたばかりのクリスチャンは芝居小屋で美しい女性に一目惚れをしてしまいます。彼女はロクサーヌ。ロクサーヌもまたクリスチャンに一目惚れしていたのでした。

 この芝居小屋に出演していたのが、モンフルウリイ。彼が舞台で詩を朗読し始めた途端、シラノ・ド・ベルジュラックが現れて、モンフルウリイを追っ払ってしまいます。モンフルウリイのパトロンの伯爵とその連れの子爵はメンツを潰され、子爵はシラノと剣を交えます。しかし喧嘩っ早いシラノはあっさりと子爵を打ち負かしてしまうのでした。

意気揚々としているシラノの元にロクサーヌの乳母がやってきて、話があるので明日教会の帰りに会いたいと伝言を持ってきました。いとこではあるのですが美しいロクサーヌに惚れているシラノは大喜びで待ち合わせ場所を教えます。そこへ友人がならず者100人に待ち伏せされているとの連絡が入り、助っ人に向かうのでした。

 翌朝、ロクサーヌとの待ち合わせ場所であるパン屋に何事も無かった顔でシラノがやってきました、そして自分の思いを口でいうのは恥ずかしいと恋文をしたためます。そこにロクサーヌが現れ、シラノに自分には好きな男がいて、それがシラノと同じガスコン青年隊のクリスチャンなので、仲を取持って欲しいこととクリスチャンの後ろ盾になって欲しいと頼みます。

 ロクサーヌの気持ちを知ったシラノは自分の思いを秘めてしまいます。ロクサーヌが去った後、前日の夜、100人相手に喧嘩をして何人もの相手を倒したシラノの噂を聞いてガスコン青年隊のメンバーがパン屋に集まってきます。そしてそこに伯爵も現れ、シラノの詩人としての力を認め、自分のために詩を作らないかと誘うのですが、それを潔しとしないいシラノはあっさり断ってしまいます。

 伯爵がロクサーヌの家に現れ、自分にスペイン軍との戦場に向かうように命令が下ったと告げます。伯爵が自分に惚れていて、色々うるさく言ってくるのを嫌がっていたロクサーヌは内心喜びます。ところが伯爵はガスコン青年隊も連れて行くと言った途端、ロクサーヌはクリスチャンも戦場にいくことになってしまうのを悲しみ、ガスコン青年隊のシラノは戦い好きなので、シラノを戦場に向かわせるのはかえって、シラノを喜ばすだけと言い、ガスコン青年隊をパリに残して置くように願うのでした。

 夕刻ロクサーヌへのラブレターまでもシラノに代筆してもらっていたクリスチャンはロクサーヌも自分のことを慕ってくれていることを知って、シラノとともにロクサーヌの家を訪ねて行きます。そこでシラノがクリスチャンにロクサーヌへの言葉を教えようと申し出るのですが、クリスチャンは断ってしまいます。しかしクリスチャンのストレートな愛の言葉に、ロクサーヌは手紙と全然違うと拒否してしまいます。
 そこでクリスチャンの替わりに、シラノは美辞麗句に包まれた愛の言葉をロクサーヌに告げ、その言葉に酔ったロクサーヌとクリスチャンはキスするのでした。

 ロクサーヌの家を訪ねて、修道士が伯爵の手紙を持って現れます。シラノが修道士に手紙の中身を誤魔化して伝え、クリスチャンとロクサーヌを結婚させてしまいます。そこへ伯爵が現れ、ガスコン青年隊も戦場へ向かうことになったと命じます。

 スペイン軍を包囲するつもりが、陣地を置いた場所が悪く、補給路を断たれたガスコン青年隊は飢えに苦しみ戦う気力さえ失っていました。そんな厳しい状況でもロクサーヌへの思いを伝えるべく、シラノはクリスチャンに成りすまして1日に2度敵の目をかいくぐって、手紙を送り続けていました。
 その手紙を見たロクサーヌはクリスチャンへの思いが募り、馬車に食料を満載して陣地を訪ねてきたのでした。
 クリスチャンとロクサーヌが語り合う中で、ロクサーヌが愛しているのはクリスチャン本人ではなく、手紙の中で愛を語るクリスチャンだということに気がついてしまいます。そして「どんなに顔が醜くなっても私はあなたを愛する」という言葉に、ロクサーヌが愛しているのはシラノだとクリスチャンは思い込んでしまうのでした。

 いよいよスペイン軍との戦いが始まり、絶望したクリスチャンは最前線に突撃し、致命傷を負ってしまいます。瀕死の中でクリスチャンはシラノの代筆した手紙をロクサーヌに渡し、死んでいきました。

 15年後、クリスチャンに先立たれたロクサーヌは修道院で暮らしていました。そこに毎週シラノが現れ、1週間の出来事を語るのが習慣になっていたのでした。
 シラノは相変わらず権力者におもねらない性格が災いして、困窮のどん底で暮らしていました。そしてあちこちに敵を作っていたのです。そして、ロクサーヌを尋ねるため、部屋を出たシラノに向かって、小僧が薪を投げつけ、シラノは頭に致命傷を負います。しかしその大怪我をおしてロクサーヌの元に現れたシラノは何事も無かったように、話を始めるのでした。そしてクリスチャンの話になったとき、最後の手紙を見せてくれと頼み、クリスチャンの血でかすれ読めなくなった文章さえも、すらすらと読むシラノを見て、今までクリスチャンが送ってくれていたと思っていた手紙の全てがシラノの書いたものだったことを知ります。しかしもうその時にはシラノの命の火は燃え尽きようとしていたのでした。

 シラノは喧嘩が強いだけではなく、口を開けば華麗な詩が流れるように溢れ出し、その詩を聞けばどんな高飛車な女でも、間違いなく心を開くなんて、この芝居が作られた当時のフランスでシラノは完璧な男だったのでしょう。ただそんな完璧な男に人並み以上の大きな鼻を持たせ、容貌のコンプレックスを足かせにしたことで、この作品が長く愛されるものになったと思いました。

 パンフレットによりますと、新国劇で昭和4年に上演されてから、シラノには70年以上の歴史があります。なので今までシラノを見たことが無かった私でも、それなりの先入観がありました。それはやはり一番のクライマックス、シラノが死んでいく場面です。なのでシラノがこんなに明るくて面白い芝居だったことに目から鱗が落ちた感じがしました。

 なんといっても膨大なシラノのセリフ量をこなした江守さんに圧倒されました。最近テレビのバラエティでのお仕事を拝見することが多く、演劇人・江守徹を見る機会が少なかったのですが、他を圧するさすがの貫禄に、シラノという役は座長でなければ演じられないと思いました。
 「ロクサアヌ接吻の場」で、クリスチャンの代わりをして、自分の思いをロクサーヌにぶつけるシラノ。でもどんなに愛の言葉を連ねても結局、キスをするのはクリスチャンとロクサーヌ。この時のシラノの感情の動き、クリスチャンよりも詩作では優れているという優越感から焦り、絶望への流れが素晴らしかったです。

 クリスチャン役は浅野雅博さん。見せ場は、戦場の場で食料を持って現れたロクサーヌと語り合うシーンでした。ロクサーヌが愛しているのは手紙の中のクリスチャンであって、本物の自分ではないことを知った深い悲しみ。自分は必要の無い人間だと思い込んで、最前線に飛び出し、撃たれてしまうクリスチャン。前半での男前だけど朴訥な人間だったクリスチャンとのギャップが印象的でした。

 ロクサーヌ役は高橋礼恵さん。100年前のフランス人男性にとって、都合のよい女といえるようなロクサーヌ。そのロクサーヌをコケティッシュに演じられた高橋さん、とても可愛かったです。
 
 文学座70周年の層の厚さは大御所から今回初舞台の若者を含む俳優だけではなく、観客の側にも感じました。江守さんがテレビだけではなく、舞台に戻ってこられるのを待っていたファンがたくさんおられるのだなと、その熱気が劇場いっぱいにあふれていたのではないでしょうか。
 
  
2006年11月27日(月) at 22:04 / コメント( 0 )/ トラックバック( 0 )
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