元気出して行こう、地方。〜山形県長井市の「ロボット・プロジェクト」 / 中村智彦
おでかけ・旅 > 地域経済を考える
☆本稿は、石川県中小企業団体中央会「会報」2005年No.2に掲載したものの再録です。
内閣府が2005年7月 7 日に発表した「地域再生に関する特別世論調査」によると、自分の住んでいる地域に「元気がない」と回答した人は全体の43.7%にも上っている。「元気がない」理由は、「子供や若い人が減っている」が 59.2 %でトップ。続いて、「商店街など中心部のにぎわいが薄れている」50.9 %、「地域の産業が衰退している」38.5 %と、地域経済の沈滞気味を反映している。
さて、それでは自分の地域を「元気にするにはどうしたらよいか?」という課題に、どう答えていくべきか。地域産業を活性化するためには、まず経営者、従業員が元気を出さねばならない。自分たちが自信を持って、「これが私たちの特色だ。」と情報発信できるものを見つけることが第一歩だ。
山形県長井市は、ロボットの街「ロボテク・シティ」として売り出そうとしている。「これからなんて、なんと悠長な」とおっしゃる方も多いだろう。確かに、ロボット産業を次世代の地域産業、地域経済の牽引役として期待をかけている地域は多い。派手な宣伝合戦が数年前から始まる中、この悠長はなぜだろうか。
「他の地域の情報も、現地を訪ねたり、ロボット関係の展示会などで集めています。他の地域では、イベントとソフトに重点を置き、特にイベントについては大幅に先行しています。でも、こちらはとりあえず造るほう重視ということで・・・」と、西置賜工業会の次世代グループのメンバーである小関博資さん((株)昌和製作所開発部)は言う。もちろんこうした意見には、裏付けがある。
長井市は、人口約3万数千人、山形県南部にある小さな街である。市街地を出れば、のどかな田園風景が拡がる農業、商業、工業の併存する都市として、戦前から戦後と発展してきた。
この街に工業が発展したのは、戦前に誘致をした東芝の存在が大きい。機械工業が発展し、地元の中小企業も高い技術水準を誇ってきた。その後、東芝の撤退、さらには関係企業の倒産など、1980 年代後半以降、ご多分にもれず厳しい環境が続いてきた。
こうした厳しい地域経済を活性化するために、平成 10 年から全国でも珍しい産官学連携の人材育成事業が開始され、注目を浴びた。それが NAGAI 次世代マイスター育成協議会である。実は、産官学の中身が興味深いのだ。地元企業が求める応用力をもった技能労働者を育成するという目的に、市内の製造業約 30 社、長井市商工観光課、長井商工会議所そして、県立長井工業高校が連携して、人材育成事業に取り組んだのである。5年間の事業実施により、多くの長井工業高校卒業生が、即戦力として市内製造企業に就職を果たし、大きな成果をもたらした。また、この事業を通じて、地元企業、工業高校、行政、商工会議所を結ぶ連携体制が創出された。この事業に続いて、平成 15 年には「ものづくり伝承塾」事業が、長井商工会議所、西置賜工業会、商工会議所によって実施された。
「初年度の活動を通じて、色々な問題点が浮かび上がってきた。」と長井市商工観光課の横山照康課長補佐が説明してくれた。技術研修に対する企業側の期待は大きいが、共通したテーマを見つけることが難しい。さらに、市の財政難から自己負担分の捻出が難しく、国の補助を受けることが困難な状況に追いつめられていた。人材育成事業は縮小を余儀なくされていた。そんな中で、求心力があり、話題性もあるロボットがテーマとして上がってきたのである。このロボットも、単に思いつきで出てきた訳ではない。実は、長井市の企業の中には、生産現場で使用される工業用ロボット(省力化機器)の製造に携わってきた企業が存在するのである。つまり、ロボットが話題になる前から、製造を行ってきた実績があるのだ。そうした素地が、先の小関氏の言葉となっているのだ。また、以前からロボットマウスに関する研究や開発なども行われてきた。
日本は、世界一のロボット大国である。ロボットと言うと、どうしても二本足であるく人型ロボットを想像しがちである。しかし、実際には、ロボットの多くは工場などの生産現場で活躍している。こうした工業ロボットの技術の蓄積を活かして、さらに様々なロボットを研究開発を協力して行っていこうというのが、長井市内の事業所の若手約 30 名が集まった次世代グループである。この「ロボット・プロジェクト」には、一般市民の有志も参加し、長井市商工観光課や商工会議所、工業高校なども支援協力を行ってきた。平成15 年から、他地域の状況など視察調査を行ったり、大手メーカーのロボット開発担当者を招いての勉強会を実施し、次第に手応えを感じたメンバーは、次年度からのテーマと
して、オリジナル・ロボットの製造と、ロボワン競技の参加と開催誘致を計画した。そして、若手経営者が自主的な研究開発を始めたのである。この頃、「実は、市内某所にロボット開発基地があるんですよ」と、若手経営者が楽しそうに話してくれた。参加者たちは、市販ロボットを購入し、地域内の技術と比較するなど、研究を進めていった。平成 16 年になると、従来のものづくり伝承塾事業のテーマ「経営能力の向上と技術者養成要請」を一本化し、「ロボット開発を通じた技術力向上と人材育成」とし、本格的な取り組みが開始された。芝浦工業大学や山形大学の教授陣を招いてのロボット開発技術取得のための講習会開催や、ロボワン本戦の視察と出場へ向けた取り組みが行われた。まずは、市販されているロボット・ベースを購入し、それをもとにオリジナルモデルを2体製作。そこから、全てオリジナルのロボット設計に取り組んだ。夏以降、2週に一回のペースで開発会議が開かれ、その様子は産業振興の好事例として全国放送の報道番組や地元テレビ局でも紹介された。
平成 17 年度になると、「若手技術者約 10 名によって始められたロボットづくりは、平成 17 年度にはロボットによる格闘技ロボワンへの参戦を予定しており、部品や装置に地域を越えた注目や評価を得つつあります。技術の集積やわかりやすいイメージづくりを支援することで、ものづくりのまち長井をリードする存在になって欲しい」と目黒栄樹市長も施政方針の中で、エールを送った。春には、置賜地域地場産業センターの中の一室を、研究開発室としてオープンした。「長井ロボット・ファクトリー」と名付けて、完全長井オリジナルのロボットの開発や、それに使用するための難加工材の加工技術取得などが進められている。
長井市での取り組みは、いくつかユニークな点を見出すことが出来る。目的は地場企業振興のための人材育成であるが、そこに固執することない活動を行っている。例えば、自分たちのロボット開発から得た知識を地域内の教育活動に活用していこうと、少年少女ロボットセミナーを開催したり、ほかの地域行事にも積極的に参加している。また、有機農法に取り組む農家から、草取りに活躍するカモ型ロボット開発の提案があり、その研究開発への取り組みなども始まっている。企業、学校(高校・大学)、市、商工会議所が、密接に連携して事業を進めている。
地方都市で産業振興の取り組みというと、「お金が無い」、「大都市には勝てない」という後ろ向きの声が多く出る。長井市も、決して恵まれた状況にある訳ではない。むしろ、逆だろう。限られた予算、人材、その中で自分たちの強みはどこにあるのか、そして、自分たちが楽しみながら、何か新しいものを取得し、多くの人を巻き込めることはなにか。そこを考え始めれば、大都市にも負けない、ちゃんと地域に根を張った産業振興事業が始まる。派手な宣伝をしなくとも、大都市から研究者や開発関係者を、魅き寄せることができる。
今、東北の「ロボテク・シティ・長井」では、若き企業人がロボットの開発を進めている。こんな取り組みが、地域を元気にしていくのだ。
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※ロボット戦隊 ナガレッド
※水田除草ロボ・・カモじゃなくて、あひるちゃんじゃん!!(爆)
内閣府が2005年7月 7 日に発表した「地域再生に関する特別世論調査」によると、自分の住んでいる地域に「元気がない」と回答した人は全体の43.7%にも上っている。「元気がない」理由は、「子供や若い人が減っている」が 59.2 %でトップ。続いて、「商店街など中心部のにぎわいが薄れている」50.9 %、「地域の産業が衰退している」38.5 %と、地域経済の沈滞気味を反映している。
さて、それでは自分の地域を「元気にするにはどうしたらよいか?」という課題に、どう答えていくべきか。地域産業を活性化するためには、まず経営者、従業員が元気を出さねばならない。自分たちが自信を持って、「これが私たちの特色だ。」と情報発信できるものを見つけることが第一歩だ。
山形県長井市は、ロボットの街「ロボテク・シティ」として売り出そうとしている。「これからなんて、なんと悠長な」とおっしゃる方も多いだろう。確かに、ロボット産業を次世代の地域産業、地域経済の牽引役として期待をかけている地域は多い。派手な宣伝合戦が数年前から始まる中、この悠長はなぜだろうか。
「他の地域の情報も、現地を訪ねたり、ロボット関係の展示会などで集めています。他の地域では、イベントとソフトに重点を置き、特にイベントについては大幅に先行しています。でも、こちらはとりあえず造るほう重視ということで・・・」と、西置賜工業会の次世代グループのメンバーである小関博資さん((株)昌和製作所開発部)は言う。もちろんこうした意見には、裏付けがある。
長井市は、人口約3万数千人、山形県南部にある小さな街である。市街地を出れば、のどかな田園風景が拡がる農業、商業、工業の併存する都市として、戦前から戦後と発展してきた。
この街に工業が発展したのは、戦前に誘致をした東芝の存在が大きい。機械工業が発展し、地元の中小企業も高い技術水準を誇ってきた。その後、東芝の撤退、さらには関係企業の倒産など、1980 年代後半以降、ご多分にもれず厳しい環境が続いてきた。
こうした厳しい地域経済を活性化するために、平成 10 年から全国でも珍しい産官学連携の人材育成事業が開始され、注目を浴びた。それが NAGAI 次世代マイスター育成協議会である。実は、産官学の中身が興味深いのだ。地元企業が求める応用力をもった技能労働者を育成するという目的に、市内の製造業約 30 社、長井市商工観光課、長井商工会議所そして、県立長井工業高校が連携して、人材育成事業に取り組んだのである。5年間の事業実施により、多くの長井工業高校卒業生が、即戦力として市内製造企業に就職を果たし、大きな成果をもたらした。また、この事業を通じて、地元企業、工業高校、行政、商工会議所を結ぶ連携体制が創出された。この事業に続いて、平成 15 年には「ものづくり伝承塾」事業が、長井商工会議所、西置賜工業会、商工会議所によって実施された。
「初年度の活動を通じて、色々な問題点が浮かび上がってきた。」と長井市商工観光課の横山照康課長補佐が説明してくれた。技術研修に対する企業側の期待は大きいが、共通したテーマを見つけることが難しい。さらに、市の財政難から自己負担分の捻出が難しく、国の補助を受けることが困難な状況に追いつめられていた。人材育成事業は縮小を余儀なくされていた。そんな中で、求心力があり、話題性もあるロボットがテーマとして上がってきたのである。このロボットも、単に思いつきで出てきた訳ではない。実は、長井市の企業の中には、生産現場で使用される工業用ロボット(省力化機器)の製造に携わってきた企業が存在するのである。つまり、ロボットが話題になる前から、製造を行ってきた実績があるのだ。そうした素地が、先の小関氏の言葉となっているのだ。また、以前からロボットマウスに関する研究や開発なども行われてきた。
日本は、世界一のロボット大国である。ロボットと言うと、どうしても二本足であるく人型ロボットを想像しがちである。しかし、実際には、ロボットの多くは工場などの生産現場で活躍している。こうした工業ロボットの技術の蓄積を活かして、さらに様々なロボットを研究開発を協力して行っていこうというのが、長井市内の事業所の若手約 30 名が集まった次世代グループである。この「ロボット・プロジェクト」には、一般市民の有志も参加し、長井市商工観光課や商工会議所、工業高校なども支援協力を行ってきた。平成15 年から、他地域の状況など視察調査を行ったり、大手メーカーのロボット開発担当者を招いての勉強会を実施し、次第に手応えを感じたメンバーは、次年度からのテーマと
して、オリジナル・ロボットの製造と、ロボワン競技の参加と開催誘致を計画した。そして、若手経営者が自主的な研究開発を始めたのである。この頃、「実は、市内某所にロボット開発基地があるんですよ」と、若手経営者が楽しそうに話してくれた。参加者たちは、市販ロボットを購入し、地域内の技術と比較するなど、研究を進めていった。平成 16 年になると、従来のものづくり伝承塾事業のテーマ「経営能力の向上と技術者養成要請」を一本化し、「ロボット開発を通じた技術力向上と人材育成」とし、本格的な取り組みが開始された。芝浦工業大学や山形大学の教授陣を招いてのロボット開発技術取得のための講習会開催や、ロボワン本戦の視察と出場へ向けた取り組みが行われた。まずは、市販されているロボット・ベースを購入し、それをもとにオリジナルモデルを2体製作。そこから、全てオリジナルのロボット設計に取り組んだ。夏以降、2週に一回のペースで開発会議が開かれ、その様子は産業振興の好事例として全国放送の報道番組や地元テレビ局でも紹介された。
平成 17 年度になると、「若手技術者約 10 名によって始められたロボットづくりは、平成 17 年度にはロボットによる格闘技ロボワンへの参戦を予定しており、部品や装置に地域を越えた注目や評価を得つつあります。技術の集積やわかりやすいイメージづくりを支援することで、ものづくりのまち長井をリードする存在になって欲しい」と目黒栄樹市長も施政方針の中で、エールを送った。春には、置賜地域地場産業センターの中の一室を、研究開発室としてオープンした。「長井ロボット・ファクトリー」と名付けて、完全長井オリジナルのロボットの開発や、それに使用するための難加工材の加工技術取得などが進められている。
長井市での取り組みは、いくつかユニークな点を見出すことが出来る。目的は地場企業振興のための人材育成であるが、そこに固執することない活動を行っている。例えば、自分たちのロボット開発から得た知識を地域内の教育活動に活用していこうと、少年少女ロボットセミナーを開催したり、ほかの地域行事にも積極的に参加している。また、有機農法に取り組む農家から、草取りに活躍するカモ型ロボット開発の提案があり、その研究開発への取り組みなども始まっている。企業、学校(高校・大学)、市、商工会議所が、密接に連携して事業を進めている。
地方都市で産業振興の取り組みというと、「お金が無い」、「大都市には勝てない」という後ろ向きの声が多く出る。長井市も、決して恵まれた状況にある訳ではない。むしろ、逆だろう。限られた予算、人材、その中で自分たちの強みはどこにあるのか、そして、自分たちが楽しみながら、何か新しいものを取得し、多くの人を巻き込めることはなにか。そこを考え始めれば、大都市にも負けない、ちゃんと地域に根を張った産業振興事業が始まる。派手な宣伝をしなくとも、大都市から研究者や開発関係者を、魅き寄せることができる。
今、東北の「ロボテク・シティ・長井」では、若き企業人がロボットの開発を進めている。こんな取り組みが、地域を元気にしていくのだ。
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※ロボット戦隊 ナガレッド2006年6月12日(月) at 07:29
このエントリ(記事)へのコメント
ご紹介ありがとうございます / ナガレッド URL
私達の活動を御紹介頂きありがとう御座います。今後もより一層頑張っていきますので、御指導の程お願い致します。そしてロボプロが、いつかは食の発掘プロジェクトや商店街の活性化とリンクしていけるようになればと願うナガレッドでした。

