【コラム】首都圏一極集中を見誤るな / 中村智彦
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地方分権に関する議論を突き詰めていくと、「中央対地方」という図式になりがちである。都市住民からすれば、縁もゆかりもない地方部での公共投資に多額の税金が投入されているのが我慢ならない。一方、地方部の住民にしてみれば、様々な面な不都合を押し付け、食料品や電気などの供給を行っているのだから、地方の整備が進むのは当然という意見もある。
東京への一極集中を問題視するようになったのは最近のことではない。かつて、一世を風靡した田中角栄氏の日本列島改造論(1972年)の根底に流れていたのも、首都圏つまり東京一極集中を改善するということだった。
東京一極集中を改善するという名目で、様々な政策が実行されてきたが、しかし、現在、残念ながらそれらが大きな成果を上げたとは言えないのは、誰の目にも確かだろう。
大学生たちに就職に関して質問すると、決まって返ってくる答えの一つに「東京は、人が多くて行きたくないです」、「都会は嫌いです」というものがある。意外に多いことに驚いてしまう。かつてとは異なり、地方部でも首都圏とあまり変わらない生活を享受できるようになったせいか、あまり東京というものへの憧れが無いのかも知れない。
同時に、中小企業経営者たちと話していても、なぜか東京嫌いの方たちが多い。東海地方や関西地方で、その傾向が強いような気がする。経営者たちだけではなく、滔々と東京批判を繰り返す地方自治体職員も多い。
ただ、こうした東京嫌いの人たちの大半が、東京に住んだことも、あまり行く機会もないことにも、やはり、すぐに気が付かされるのである。
こうした姿勢は何かを見落とすことにはなりはしないだろうか。
「高価格商品の主要な市場は関東に移っている。」そう話すのは、関西系の総菜メーカーの担当者である。「神奈川に工場を設置して、ずっと苦戦を続けてきたが、この十年で急激に業績が上昇してきた。工場も規模を拡大し、役員を一人転勤させた」と話す。また、和紙などを扱う企業の経営者も、「以前は、神戸、京都といったところに主要な顧客がいたが、今では高級品を購入する顧客はほぼ首都圏に集中している」と話す。この経営者は、阪神大震災が変化点だという。
一方、ある大手企業は、自社事業の投資先を本拠地である関西から首都圏にシフトしている。「景気低迷の中で、関西圏での事業性が低くなり、むしろ利益を確保できる首都圏への集中的な投資を実施している」とその企業の社員は話す。「子会社などの本社も、親会社のある大阪ではなく、東京に置くことが多くなった。」
「東京へ出張したが、十年前と比べてもそんなに変わらない」という感想を述べる地方在住者は多い。「確かに、高層ビルが増加して、都心回帰という言葉も理解できるが、ああいうところの居住できるのは、ごく僅かでしょう。」
東京出張というと、新幹線で、東京、上野、品川あたりに着くか、羽田に飛行機で降り立つかのいずれかだろう。そのまま山手線に乗り、あるいは地下鉄に乗り換えて、目的地へ向かう。確かに、都心部は高層ビルが増加したものの、街を歩く限りではそれほど変化したとは実感できないだろう。都心で仕事を済ませ、夕食を食べ、ホテルに泊まっている限りでは、首都圏集中も懸念するほどではないと感じるかも知れない。
しかし、冒頭で紹介した企業関係者が高額商品のマーケットとして期待しているのは、実は神奈川県である。特に都筑区は大きな可能性があると言う。都心だけを見て、安心するのは間違いだ。仮に首都圏集中を実感したいのならば、むしろ東海道新幹線の新横浜駅から北進することをお勧めする。
新横浜の北側に位置するのが港北ニュータウンである。横浜市都筑区になる。都筑区は平成6年、港北区と緑区より分離統合によって誕生した新しい区である。設立当時の人口は、約11万人。しかし、横浜市営地下鉄がニュータウン内を走り、東京、横浜への通勤圏となったこともあり、現在では17万人を越し、およそ10年間で実に6万人近く増加している地域である。
港北ニュータウンは、計画面積 約2千5百ヘクタール、計画人口30万人の巨大ニュータウンである。現在の人口は約12万人超、居住者の平均年齢は35歳と横浜市の区別では最も若い。さらに、老齢人口も8%とこれも最低である。言ってみれば、非常に活気のある地域だということが言える。
これの地域をさらに北上すると、多摩ニュータウンに連なっていくことが分かる。つまり、首都圏の西側を南北に巨大な郊外型住宅地が造成され、さらにそれは現在も拡大しているということになる。
バブル経済が崩壊し、開発のスピードが落ちたとはいえ、人口の増加率などを見ると、この地域が大きなマーケットとして期待できることが理解されるだろう。
この港北ニュータウンから多摩ニュータウンにかけて、多くの企業が期待をかけるもう一つの理由は、富裕層の多さである。
「クリスマス時期に行くと、すぐ理解できるよ。この地域の戸建て住宅は、まるで観光地のようにイルミネーションで飾り立てられている。」イルミネーションを点灯すると、その量によっては、一ヶ月の電気代だけで数万円かかることが多いとある不動産関係者は指摘する。つまり、それだけの余裕がある家庭が多いと言うことだ。
事実、ある大手流通関係者は次のように述べている。「地方の人に言っても、その場所すら想像できないような地区だが、利益率、売り上げ高ともうちの店舗の中で最高だ。」また、別の流通企業の社員も、「あの地区の店舗を見れば分かるが、スーパー形式でも品揃えが高級品中心になっている。少し高くても良いものが欲しいという家庭が多い」と言う。
「ネット販売を行うには、首都圏の顧客をつかむことが重要。特に、郊外に住む富裕層に対して、どうアピールできるかだ」とネット上で産直の食品などを販売する業者が指摘する。
三十代から、40代前半で、パソコンを自宅でも使い、自然食品など産地直送などの商品に関心がある層がバーチャル上での販売にも重要な顧客である。
こうした顧客層が集中しているのが、このエリアだと先の業者も指摘する。「この辺の消費者が、どのようなライフスタイルをし、どういった消費行動をしているかを、現地視察することも重要でしょうね」とも指摘する。
「高額所得者層が多い。したがって、マーケットとして期待できる。当社もそうだが、そうなると重役級を派遣するようになる。そうすると、さらに富裕層が増える。そういうことではないだろうか。」食品製造企業の社員は指摘する。
都心回帰とは言うものの、その中心は家庭のいない夫婦や、単身者が中心であると言われている。子供のいる家庭の多くは、郊外の一戸建て住宅を志向する傾向は、まだ強い。
こうしたことからも、港北入ータウンなどの人口増加が継続しているものと考えられる。
この地域が大きなマーケットであることはすでに説明をした。そこで問題になってくるのは、地方において、それをどう捉えるかである。
読者諸氏には、地方の中小企業経営者や中小企業支援機関の職員が多いだろう。まずは、一極集中の実態を捉えなおす必要があるだろう。
一極集中ということで、都心部を視察するのも良いが、その周辺部での起こっている変化を認識することからはじめても良いのではないか。
さらに、こうした地域に大きな市場が存在することを理解し、そこへのアプローチの方法を検討する必要がある。
魚がいないところで、いくら釣り糸を垂れていても、魚が釣れることはない。
地方の衰退を嘆く声をよく耳にする。人口の減少、すなわち顧客の流出である。その中で、顧客を呼び込もうとする戦略が、観光産業の活性化だろう。しかし、もう一つは、魚のいる池に釣りに出かける、すなわちここで述べたような依然として成長を続ける地域へ商売に出かけるという戦略がある。
「東京市場に攻略をかけたいのですが、地元採用の人材は東京転勤を極度に嫌って困っているのです。」数年前、あるアパレル企業の人事部長がそう嘆いていた。その企業は、その後、民事再生法を申請し、建て直しを請け負った新社長は、本社を東京に持っていった。「一種のショック療法だ」と新社長は述べ、地方都市から外に出ようとしない沈滞したムードが経営不振の元凶の一つだと指摘していた。
首都圏集中は、逆らえない流れである。ならば、その流れの中で、どうやって生き残るかを考えれば、採るべき戦略は限られてくるはずである。
「東京は人が多いから、嫌いだ」という前に、大きな市場であると認識し、そこの人たちが、どういったライフスタイルを持っているのか、どうやったら彼らを魅了できる商品作りができるのかを研究する必要があるだろう。
もちろん、こうした地域が、今後も成長を続ける訳ではない。 国立社会保障・人口問題研究所による都道府県別の人口推計によれば、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口シェアは、2000 年の26 %から 2020年には 28%まで上昇する。しかし、2015年から 2020年にかけては、一都三県すべての自治体で、人口の絶対数は純減すると予想されているのである。
これは首都圏だけの問題ではなく、少子化、高齢化が進む中で人口減少が全国で進むことが予想され、さらに首都圏への集中が進むという、実に地方からみれば深刻な事態が予想されているのだ。
長期的にみると、悲観材料が多いように思える。しかし、短期的に見れば、市場としてのおもしろみを持った地域が存在することは確かである。
さらに、最近の傾向として、こうした首都圏郊外のライフスタイルが、すぐに地方に伝播し、地方の消費者にも求められることが多い。
もちろん、首都圏マーケットへの参入は、市場も大きい反面、競争も激しく、相当の努力が求められる。しかし、何度も言うが、魚のいない池に釣り糸を垂れて、嘆いていても何も連れはしないのだ。
2005年5月7日(土) at 17:37 / コメント( 3 )
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このエントリ(記事)へのコメント
もちろん都合悪いです /
中村智彦 URL
削除させて頂いたコメントも、「東京崇拝のクソ野郎が」だけでした。それ以外は何も書かれていませんでした。
クソとか書かれて、都合がよいはずがありません。
よく読んでいただければお分かりになると思いますが、東京を崇拝などしたものになっていません。
いずれにしましても、こうした書き込みがあることを多くの方に見ていただくために、今回は大切に残させて頂きます。
ただ、残念ですが今後、対応しかねますので、当面の間、書き込み、トラックバックを停止させていただきます。
クソとか書かれて、都合がよいはずがありません。
よく読んでいただければお分かりになると思いますが、東京を崇拝などしたものになっていません。
いずれにしましても、こうした書き込みがあることを多くの方に見ていただくために、今回は大切に残させて頂きます。
ただ、残念ですが今後、対応しかねますので、当面の間、書き込み、トラックバックを停止させていただきます。
2008年02月17日(日) at 15:41
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益々繁栄☆トーキョー / 場当たり人生♪
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そして、八重洲口は、ツインタワーになるべく、大工事が...
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