ハンバーガーを食べて健康になれるのか? / 中村智彦
日記・その他 > コラム
「ハンバーガーとサイドメニューの合計で400キロカロリー以下に抑えた新メニュー」というのが、新生ロッテリアのウリである。ロッテリアは、業績が振るわず、建て直しを目指して、ファーストリテイリング(ユニクロ)の前社長で、現在は企業再生会社リヴァンプの代表取締役を務める玉塚元一氏が、ロッテリアの会長兼CEO(最高経営責任者)に迎え、全面的な戦略の見直しを行った。
「ハンバーガー・ダイエット」と銘打たれた新メニューは、「400 BURGER SET」と呼ばれ、豆腐ひじきバーガーや、豆のサラダなどが中心となっている。
リニューアルされた池袋東口店は、明るいデザインで統一されている。イメージ的には、最近人気の出てきたブラニフ・エアラインのデザインを想像させる。一人席が用意され、そこではPCなどで作業できるようコンセントが準備されている。80年代のアメリカの未来的デザインを生かしながら、ビジネスユースにも使えるような、空港にあるとふさわしいようなインテリアになっている。
ただ、正直な感想を言うと、なぜリニューアル一号店が池袋東口店なのだろうかと不思議である。この店舗は、池袋駅からサンシャイン21に通じる通りにあり、平日でも人通りの多いところである。ただ、電気店やカラオケ店、飲食店などが雑然と並ぶ地域であり、正直なところ、そうおしゃれなエリアとは言えない。せっかくのおしゃれなデザインも、周囲の雑然とした雰囲気の中に浮かび上がってこないし、客層的に見ても・・? である。第一号店の出店先が、違ったエリア、例えば、表参道や品川、せめて新宿の辺りであったならば、もう少し話題にもなったであろうと思うのだが。
さて、店舗のデザインはさておき、ハンバーガーショップが本格的に健康、自然、環境といったことをキーワードとして意識してきたのは、興味深い。
4月に、ロッテリアが池袋東口店のリニューアルで話題になった直後、今度はマクドナルドが新聞に4ページ、それもカラーでの広告を打った。そこでのウリは、「サラダマック」。
アメリカでは、5月、ウォルト・ディズニー社が、マクドナルド社との10年間に及んだ提携関係を、夏で解消することが報道された。ディズニーは、キャラクター使用料として、年間約1億ドル(約113億円)を得ていたが、それでも解消する理由は、やはり「健康」である。肥満問題が深刻化しているアメリカで、その元凶とされるハンバーガーやフライドポテトなど高カロリー商品を販売する企業との提携は、自社のイメージダウンに繋がると判断した訳だ。
こんなこともあって、「健康」はハンバーガー・チェーンにとっても無視できないところにまで来たのだろう。ロッテリアにしろ、マクドナルドにしろ、アメリカだけの傾向ではなく、日本やアジア全体に広がるだろうと踏んでいるようにみえる。
しかし、「健康」や「自然」といったことをキーワードにしてきたのは、モス・バーガーが先行してきた。モスは、値段は高く、店舗も少ないが、美味しいし、健康的で、おしゃれという戦略で、着実な経営をしてきたことで有名だ。根強いファンも多い。ある意味で、先見の明があったといえるだろう。
マクドナルドやロッテリアと、モスを比較すると、今までのもっとも大きな違いは、価格訴求力だったはずだ。実際、サラダ・マックや、ロッテリアの新メニューについて、周囲の友人たちに意見を聞くと、「価格が高い」という反応が返ってくる。もちろん、モスに比較すると、そう高くはないのだが、「マクドナルドにしては・・」あるいは「ロッテリアにしては・・」という言葉がついて出るのだ。両社が、そうしたイメージをどこまで変えられるのかが興味深い。
マクドナルドの経営戦略を見ると、確かにみごととしか言えない洗練されたものだと思わされる。しかし、一方で、マクドナルドは、今までも幾度となく、ファーストフード・ショップから、レストランへの脱皮を図り、残念ながら成功してこなかった。それほどに、マクドナルドに対する消費者の要求は、ファースト・フードであり続けること、そこには価格訴求力が最も大きいものであったことを示している。
いったん低価格を売りにしてしまうと、なかなかそのイメージを変えるのは困難であることは、数々の事例で証明されている。(と、書いていると、ユニクロが、婦人服小売のキャビンを買収という記事に目が留まる。)
マクドナルドが、最近打ち出したもう一つの戦略も注目される。
マクドナルドは、4月に新メニューや価格の値上げなどに加えて、営業時間の二十四時間化を発表し、5月からドライブするー店舗を中心に二十四時間営業や深夜営業を実施している。コンビニ利用客をターゲットにということのようだが、業界紙などではどれだけの利益を確保できるのか、疑問視する意見も少なくない。
それにしても、「健康」や「高級品志向」そして、「深夜営業」と並べてみると、なんだかバブル経済の頃と、キーワードが似ているような気がしてならない。
流行というか、流行させようとして失速気味のLOHASもそうであるが、「健康」とか、「自然」とか、「環境」と言ったものが、商業ベースに乗った途端、それは非常にうさんくささが、加味されてしまうのではないだろうか。
しかし、「健康志向」が消費者に強くなりつつあることは確かなようだし、大きなマーケットがあることも間違いないようだ。果たして、誰が、それをうまく掴むのだろうか。
マクドナルドや、ロッテリアや、モスの宣伝努力を見ていると、日本の地方の農家や食品業者は、もう少し、自分たちの努力とその価値に目覚めても良いのではないだろうかと思ってしまう。本当の「健康」とか、「自然」が大都市のハンバーガーショップにあるなんて、恐らく誰も思ってはしない。
むしろ、LOHASに代表されるような大手資本が触手を延ばす「健康」や「自然」に疑いを持ち始めている消費者も多いはずだ。
本当にまじめに農業や食品製造に取り組んでいる業者は、数多い。そうした人たちにとってこそ、今がチャンスではないのだろうか。

