横田空港って知っていますか? / 中村智彦
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関西国際空港について議論する時や、中部国際空港について議論する時、あるいはほかの国内の空港についての議論をする時に、時々、疑問に思うことがあります。それは首都圏の航空事情を勘案しているのだろうかという点です。
10年以上前、関西国際空港が開港する前です。航空会社に勤務していたのですが、海外に行っても航空関係者は、関西国際空港の建設には疑問を持っていました。
どの航空会社も首都圏への乗り入れを希望しており、仮に関西に大きな空港が完成し、乗り入れが容易になっても、それはあくまで、「代替」でしかないということなのです。
一般の方は、あまりご存知ないかもしれませんが、航空会社にとって重要なお客は、ビジネスクラスに乗る人たちです。格安ツアーに参加するエコノミーの、それも低価格のお客は利幅も薄く、いくら増加してもたいして収益を生まないのです。もちろん、こうしたエコノミー客を対象にした格安航空会社やチャーター便などはありますが、これはこれで別のビジネスモデルです。
いろいろ議論はあるでしょうが、通常の定期運航する航空会社にとって、重要なのはビジネスで乗ってくれる、つまり多少高くとも航空券を買ってくれ、それも何度も乗ってくれるお客が重要なことであることは、理解していただけると思います。
であるとすれば、そういうお客はどこにいるのでしょうか。日本の大企業の本社が集中し、本社でなくとも国際関係の部署がおかれている土地、すなわち東京に多くそうしたお客がいるわけです。ですから、航空会社は首都圏への乗り入れを希望するわけです。
お客がいるから、そこでサービスを提供して利益を上げようとする者が集まる。サービスを提供するものがそこにいるから、お客が集まるわけではないことは、お分かりだと思います。
さて、こうした状況にあって、海外から見ると、日本の空港政策を見ると、理解しがたいことは想像に難くないはずです。
中部や関西といった空港整備に、資金を投入するのであれば、むしろ首都圏の空港整備が先ではないかという考えになるのです。
「国際空港を整備することで、国際線が就航し、海外からの投資の誘致材料になる」という主張もあります。しかし、よく考えてみると、順序がおかしいのです。国際空港を整備しても、お客がいなければ航空会社は就航させません。海外からの投資が増えるような魅力的な地域経済を形成し、訪問するお客が増えて、初めて航空会社は新規路線として就航させるのです。航空会社は、儲からない路線には飛ばしません。
首都圏の空港を整備し、成長著しい周辺各国の空港との激しい競争を戦う。そして、日本国内各所からは、小型機、中型機で首都圏の空港との利便性良く接続を行う。
実は、これこそがハブ・アンド・スポーク理論そのものなのです。首都圏からわずか300キロメートルの中部、500キロメートルの関西、それぞれがハブ空港を目指すというのは、理論そのものに反するものだと言えます。
私が航空会社に勤務していた頃から、日本の国際空港は首都圏の三空港が、きちんと整備されれば、ほかに巨大な空港は必要ないという意見が多く聞かれました。
その三空港は、成田、羽田、そして横田です。
成田は、長距離国際線。欧米などの長距離路線は成田に集中。
羽田は、近距離国際線。便数も多い韓国、中国、台湾、香港などの近距離路線は、羽田を再国際化することで対応。
そして、最後の横田は、中距離国際線。東南アジア諸国などは、横田の返還、もしくは軍民共用で対応。
これが、日本の国際線運航の体制は十分。近隣諸国に対抗するためには、これが一番の体制だと、私も思います。
もちろん、震災など災害の多い日本ですから、首都圏の三空港の「もしも」のために、代替空港を用意する必要はあります。しかし、それ以外、巨大空港を建設する必要性は無いでしょう。(というか、無かったのです。)
しかし、たいてい、ここまで話してくると、「横田ってどこ?」と聞かれることが多いのです。
横田は、現在、在日米軍の基地です。都心から約40キロメートル。広大に敷地に、ジャンボジェット機が離発着可能な滑走路があります。
日米安保条約との関係や、周辺の騒音問題など解決すべき点は山積なのですが、石原慎太郎都知事は、公約として横田飛行場の民間利用を掲げており、さまざまな働きかけを政府にしています。石原知事は、混雑する羽田空港の離発着枠の有効活用のために、国内線の一部を横田に回すことを提案しています。
さて、ここまでお読みになった方たちは、いろいろご意見をお持ちだろうと思います。その可能性から、日米の軍事協力、石原知事の考えに至るまで、種々でしょう。
しかし、ここでお話したいのは、こうした首都圏の動きを勘案した上で、中部なり、関西なりの空港政策が立てられているのだろうかという点なのです。
関西国際空港にしろ、中部国際空港にしろ、「ハブ空港としての機能」という文句が打ち出されています。しかし、それを書いている人は、本気で書いていたのでしょうか。それとも、まず建設ありきで、無理を承知でそう書いていたのでしょうか。恐らく後者でしょう。
首都圏に負けないような空港を、中部にも、関西にも作る必要があると主張する人に、「横田って知っていますか」というと、多くの場合、きょとんとされます。
もちろん、ご存知でも、「今の日米安保の下で、米軍がそう簡単に手放さないだろう」という意見をおっしゃる方がたいていです。それは、そうでしょう。しかし、これから先、どう動くかなど想像はつかないことです。
関西国際空港の二期工事が行われ、滑走路が増設されたことの影響で、中部国際空港の国際便のいくつかが関西に移されるということが起きました。今、中部の政財界は、中部国際空港も、それに対抗して二期工事を行うべきか否かで、二分裂しているようです。
国内の地域ごとの競い合いはいいのですが、オール日本で見た時に、果たしていくつも「ハブ空港」が林立するのがいいことなのでしょうか。
個人的には、競争相手は成長著しい周辺諸国の空港であり、オール日本で対抗するためには、首都圏の空港の充実を急ぎ、地方空港は、その首都圏の空港との連絡を向上させることが重要なのではないかと考えています。「首都圏集中をこれ以上、進めるというのか」というお怒りの意見もあるでしょうが、こと国際空港に関して言えば、もう少し大所高所からの視点が必要であると考えます。
空港、航空に関しては、多くの、結構、専門家の人たちと話しても、なにか理想というか、空想的なものをお持ちな場合が多くて、困ることがあります。
先にも書きましたが、航空会社は、儲からない路線は飛ばしません。いつも説明する時に申し上げるのですが、「新幹線の駅を作れば、最低でも各駅の列車は止まります。仮に一時間に1本しかなくても。しかし、飛行場を作ったからといって、飛行機が飛んでくるとは限りません」とお話するのですが、わかってくださらない方が多くいます。関西国際空港に関しても、中部国際空港に関しても、開港前にその必要性を述べた報告書や書籍をたくさん出しています。以前にそれらを縦覧してみたことがあるのですが、失礼ながら、わざと専門家や業界の人を排除したに違いないと思えるほど、「夢」と「空想」をいかにも現実のもののように書かれていました。こうしたものに、今も多くの人たちが惑わされているとしたら、それは大きな罪でしょう。
自分の地域にも立派な国際空港をと思うのではなく、むしろ首都圏の空港といかに利便性を高く結ぶべきなのかを考えることの方が、ハブ・アンド・スポーク理論に合致したことだと思います。
名実とも日本国内のハブ空港となっている羽田空港の雑踏の中に身をおき、建設の進む国際線ターミナルを見るたびに、各地で「ハブ空港の建設」を主張する人たちが、その意味を正しく知り、横田をはじめとする首都圏の空港の状況を知った上で発言しているのだろうかと思うのです。
知った上で、戦略を持って空港建設を推進していただいているのならいいのですが、「夢」や「空想」をそのままにしているようでは、今、すでに始まっているアジアの航空競争、空港間競争で戦うことは難しいのではないか、そう思っています。
関西圏や中部圏の空港をどうするかという議論に関しては、行政も財界もそろそろきちんと専門家や業界に詳しい人たちを集めて、現実を見据えた戦略を立てる時期になっていると思うのですが、いかがでしょう。
◆東京都『横田飛行場の民間航空利用』
2007年11月11日(日) at 21:50
このエントリ(記事)へのコメント
空港の問題は難しいですね /
きゃろわん URL
こんにちは、きゃろわんです。
いつも興味をもってブログを拝見しております。
空港の問題はいつの時代も難しいですね。
確かに現状でも、伊丹⇒成田のシャトル便が、伊丹⇒羽田なみに30分に1本あれば、京阪神から関西空港へ行くより相当便利だと思います。航空行政は「経済合理性の観点からベストな形」ではなく「その地域の利権や既得権」がからんでくるため、ややこしくなってしまうのではないでしょうか。
日本がアジア全体を相手に勝負しないといけない時代に、残念ながら貴重な財源と時間を浪費しているように見えてしまいます。
いつも興味をもってブログを拝見しております。
空港の問題はいつの時代も難しいですね。
確かに現状でも、伊丹⇒成田のシャトル便が、伊丹⇒羽田なみに30分に1本あれば、京阪神から関西空港へ行くより相当便利だと思います。航空行政は「経済合理性の観点からベストな形」ではなく「その地域の利権や既得権」がからんでくるため、ややこしくなってしまうのではないでしょうか。
日本がアジア全体を相手に勝負しないといけない時代に、残念ながら貴重な財源と時間を浪費しているように見えてしまいます。

