HOME > 日記・その他 > コラム > メディア考

メディア考 / 中村智彦

日記・その他 > コラム
 ネット社会ということについて、最近、少し考えさせれた点がある。というか、改めて考えさせられた。

 一つは、JR西日本の事故調査委員会の報告。結局、いろいろ言われたが、詳細な検査から、事故列車の運転士は、高速運転のまま、ブレーキを全く作動せずに、突っ込んで行ったことが分かった。
 あの日、ある大学の講義を終えて、控え室にいた時、事務員が慌てた様子で部屋にやってきて、「かなりの大事故だ。うちの大学の関係者にも被害者がいるかもしれない」と話していた。
 その後、ネットで情報を読んでいたのだが、すでに当日の段階でネット上では、運転士がブレーキをかけずにカーブに突っ込んで行ったのではないかという説が多く、さらに漫画の中に同じような光景を描いたものがあるという指摘まであった。
 結果として、ネット上の指摘が正しかった。

 もう一つは、JMN事件(風説の流布事件)である。この事件は、簡単に言ってしまえば、JMN(ジャパン・メディア・ネットワーク)というベンチャー企業が、携帯電話がかけ放題になる発明をしたといい、サービスをはじめるから代理店を募集する、そして、それを元に上場企業から資金を騙し取ったというものだ。
 そもそも、この携帯電話がかけ放題になる発明なるものが、当初から疑問視されていたのだ。
 これもネット上では、相当の話題になっており、初期段階から詐欺であるとの疑いをかけ、追求してきたサイトも存在する。このサイトでは、当初から専門家が多く、技術的に疑問が多すぎ、実現不可能な事業だと指摘していた。
 結果は、最近の報道のように全くの詐欺事件だった。
 証券取引での問題ももちろん、大きいが、ここで非常に不可思議なのは、素人の私ですら、初期段階で、これはかなりの騙しだと気が付くほどネット上で情報が流れていたにも関わらず、長期に渡り、警察も既存メディアも放置していた点だ。警察は内偵していたのかもしれないが、すくなくとも既存メディアの対応はネット上に比較すると冷淡だった。

 新聞やテレビといった既存メディアの立場としては、確かにネットで流れていることは承知しているが、真偽のほどがはっきりしない情報を流すことは難しいといったことだろう。
 確かにそれは間違っていない。しかし、ネットの後追いになるのでは、ますますメディアとしての必要性を低めてしまうのではないだろうか。もしかすると、既存メディアの記者たちが、組織の中で管理されることに慣れ、そして利益追求の強さの中で、事件性があるかどうか不確定なものを追いかけておくという余裕を失っているのかも知れない。
 この事件を追及してきたのは、ネット上のHP制作者であり、あるいはフリーのライターたちであった。この点でも、メディアの構造や社会的存在に関して、新たな考察が必要になっている。

 ネット上には膨大な量の情報があふれており、その真偽を判断するのは、非常に困難なことだ。しかし、間違ってはいけないのは、すべての情報が間違っている、あるいは虚偽のものである訳ではないという点だろう。
 利用していない人ほど、IT技術に関して、過大な期待をかけたり、一方で毛嫌いする傾向が強いようだ。「風説の流布」事件などと名づけられているが上場企業の経営陣たちが、IT技術に関してもう少し知識を持ち、冷静な判断をしていれば、「無料の電話通話技術」なるものが疑わしいものであることも、ネット上でその話を持ち込んできた連中がベンチャー企業ではなく、単なる詐欺師だということも、分かったであろう。

*当初から問題を指摘していたサイト → http://www.geocities.co.jp/Technopolis/8187/ 
2005年10月9日(日) at 00:57