朱雀の洛中日記

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夢の枕に / 朱雀

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 6月28日(土)曇り。昨日の夕方、用事があって家の近くを歩いていたら、クチナシの花とはちがう甘い香りがした。香りのするほうを見やると、ブロック塀の向うにみかんの木の白い花が見えた。おお、橘の香りと嬉しくなり、思わず「かへりこぬ昔を今と思ひねの夢の枕に匂ふ橘」という歌が口をついて出た。歌の世界には全く昏いが、好きな歌人をといわれたらこの歌の作者である式子内親王と和泉式部だと応える。私は密かに式子内親王を観念の、和泉式部を体験による恋の歌の名手、と呼んでいるのだが。式子内親王のこの歌の本歌はもちろん古今集にある「五月まつ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする」である。ここから橘の香りといえば昔の恋を意味するものとなった。町なかに住んでいると、蜜柑の花の香をかぐことなど滅多にない。昨夕は不意をつかれたようなものだったが、だからといって私にはこの香で思い出すような昔の恋などないのだ。残念なことである。
 今日は今から淡路島経由で四国行き。雨が降らなければ明石海峡をフェリーで渡ってみたいのだけど・・。

 写真はもう盛りを過ぎたテイカカズラ。式子内親王を慕う定家の情念がカズラとなって内親王の墓に絡みついたというけれど、式子内親王の意中の人は法然だったと石丸晶子さんは書いています(『式子内親王伝―面影びとは法然』朝日新聞社 1989年)。
2008年6月28日(土) at 06:47