[本格推理読物]fm GIG暴行未遂事件(2)・灼熱の猛威 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
それからしばらく経ったある日、田中とおのあきこは新京都署に向かっていた。
「あ〜あ。やっぱりやめようかしら、、、」
「だめですよ!また襲われたらどうするんですか」
「それはそうだけど、、、」
新京都署のドアを抜け、『受付』と書かれた席に座っている若い制服警官に話しかける田中。
「あの、すいません」
「なに?」
「あ、えと、森山刑事か土屋刑事をお願いしたいんですが」
「用件は?てか、あんた誰?」
「え、あ、以前お世話になった、あ、田中と言います。fm GIGの、と伝えていただければたぶん、、、」
「ちょっと待ってて」
「なんであんな横柄なのを受付に置くのかしら。まるでこっちが犯罪者みたいじゃないの。ねえ」
小声で田中に囁くあきこ。
「まあまあ。あ!はい!!」
受付に呼ばれてあわてる田中。
「森山さんは異動してここにはいないって。で、土屋刑事はもうすぐ戻って来るらしいけど。どうする?待つの??」
「あ、出来れば」
「てか、何の用なの?こっちも忙しいんだけどね」
「そっちが忙しいと、誰かに襲われてケガしちゃいけないって言うの!?」
抑えていた鬱憤を吐き出すあきこ。
「ちょちょちょ!姉さん、落ち着いて、、、」
「うるさいビっツ!なんなのこいつ!だから警察なんてイヤだったのよ!どうせ犯人なんて捕まえられないし、真面目に捜査する気もないに決まってるんだから!あたし帰る!!」
出口に向かって大股で歩き出すあきこを追う田中。
ドアを開けた瞬間、男とぶつかるあきこ。
「気をつけなさいよ!ばか!!」
「あ、ごめんなさい」
「土屋さん!待ってたんですよ!!」
「え?あ、、、」
「田中です。先日お世話になった、、、」
「ああ!どうもその節は。えと、どうしたんですか?この方えらくエキサイトしてらっしゃいますが」
「実は、ちょっとした事件があって、それで、、、」
「ちょっとした事件ってどういう事よ!このばかビっツ!!襲われたあたしの身にもなりなさいよ!!」
「わわわ。今のは言葉のあやで、、、」
「襲われたですって?」
「ええそうなんですよ。それで、、、」
「ま、とりあえず話を聞かせてください。こちらへどうぞ」
歩き出す三人。途中、受付の若い警官に向かってあきこが言う。
「あんたねえ!警察官だからってエラそうにするんじゃないわよ!今度見かけたらギタギタのメタメタのグチャグチャにしてやるから!!」
「はあ、、、なんで僕の周りはこんな疲れる人ばかりなんだろう、、、」
人知れず呻く田中。
(つづく)
「あ〜あ。やっぱりやめようかしら、、、」
「だめですよ!また襲われたらどうするんですか」
「それはそうだけど、、、」
新京都署のドアを抜け、『受付』と書かれた席に座っている若い制服警官に話しかける田中。
「あの、すいません」
「なに?」
「あ、えと、森山刑事か土屋刑事をお願いしたいんですが」
「用件は?てか、あんた誰?」
「え、あ、以前お世話になった、あ、田中と言います。fm GIGの、と伝えていただければたぶん、、、」
「ちょっと待ってて」
「なんであんな横柄なのを受付に置くのかしら。まるでこっちが犯罪者みたいじゃないの。ねえ」
小声で田中に囁くあきこ。
「まあまあ。あ!はい!!」
受付に呼ばれてあわてる田中。
「森山さんは異動してここにはいないって。で、土屋刑事はもうすぐ戻って来るらしいけど。どうする?待つの??」
「あ、出来れば」
「てか、何の用なの?こっちも忙しいんだけどね」
「そっちが忙しいと、誰かに襲われてケガしちゃいけないって言うの!?」
抑えていた鬱憤を吐き出すあきこ。
「ちょちょちょ!姉さん、落ち着いて、、、」
「うるさいビっツ!なんなのこいつ!だから警察なんてイヤだったのよ!どうせ犯人なんて捕まえられないし、真面目に捜査する気もないに決まってるんだから!あたし帰る!!」
出口に向かって大股で歩き出すあきこを追う田中。
ドアを開けた瞬間、男とぶつかるあきこ。
「気をつけなさいよ!ばか!!」
「あ、ごめんなさい」
「土屋さん!待ってたんですよ!!」
「え?あ、、、」
「田中です。先日お世話になった、、、」
「ああ!どうもその節は。えと、どうしたんですか?この方えらくエキサイトしてらっしゃいますが」
「実は、ちょっとした事件があって、それで、、、」
「ちょっとした事件ってどういう事よ!このばかビっツ!!襲われたあたしの身にもなりなさいよ!!」
「わわわ。今のは言葉のあやで、、、」
「襲われたですって?」
「ええそうなんですよ。それで、、、」
「ま、とりあえず話を聞かせてください。こちらへどうぞ」
歩き出す三人。途中、受付の若い警官に向かってあきこが言う。
「あんたねえ!警察官だからってエラそうにするんじゃないわよ!今度見かけたらギタギタのメタメタのグチャグチャにしてやるから!!」
「はあ、、、なんで僕の周りはこんな疲れる人ばかりなんだろう、、、」
人知れず呻く田中。
(つづく)
2006年6月11日(日) at 13:34
[本格推理読物]fm GIG暴行未遂事件(1)・兇悪の視線 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
「ガシャーン!!!」
何が起きたのかわからなかった。我に返ると目の前にはカラカラと空回りする自転車の車輪。あ〜、転んだのか、、、立たなきゃ、、、
そう思った瞬間、黒い目出し帽で覆面をした何者かに覆いかぶさられ、厚手の大きな革製の手袋をした右手に口と鼻を塞がれた。苦しい!息ができない!!
薄れ行く意識の中で、それでもまだしっかりと自分に言い聞かせていた。
「助けを呼ばなきゃ!大きな声で叫べば、きっと誰かが助けに、、、」
でも、状況が飲み込めていけばいくほど、反作用で声が出ない。恐怖で気が狂いそうになった時、左手がジーンズに伸びてきた。ボタンが外され、ファスナーを下ろされる感覚。
「い、いや、、、やめて、、」
思わず声が出た。ん?声が出る!今だわ!!
自分の口を塞いでいた右手をはらいのけようと力を込めると、拍子抜けするほどいとも簡単に振りほどけた。
「誰か助けて!誰か!誰か助けて!!」
まるでその叫びを待っていたかのような驚くべき素早さで何者かが走り去って行った。
「助かった、、、」
泥だらけになったまま座り込んで安堵の溜め息をもらす。ん?肩が痛い。突き飛ばされた瞬間に怪我をしたんだろうか。血が流れている。
安心と恐怖が蘇り、涙が止まらなかった。でも、目出し帽の奥で光ってたあの眼。絶対にどこかで見た事があると確信した。
いったいどこで?、、、、、
「ひどい目に遭いましたね〜」
田中が軽い調子で言う。昼の生放送が終わったfm GIGのスタジオ内で雑談する二人。
「ちょっと。もっとちゃんと心配してくれたらどう?ほんとに怖かったんだから!」
「わかってますってば。危ないところで助かったんでしょ?本当に良かったですね。でも、、、」
「なに?」
「あっこ姉さんを襲うなんて、犯人もいい根性してますね。ははは」
「なぐるわよ、ビっツ!」
「冗談ですよ。で、ちゃんと警察には行ったんでしょう?」
「ううん」
「どうして!?駄目じゃないですか!」
「いいの。面倒だし、どうせ犯人なんて捕まえられないし」
「でも怪我までさせられて、そんな危ない目に遭ったのに!」
包帯で覆われた肩をさすりながら、おのあきこは言う。
「いいんだってば。話を大きくして皆に心配かけたくないし」
「もう!おかしなところで律儀なんだから、、、。あ!あ、、、いや、やめとこう」
「なによ」
「なんでもないです」
「本当になぐるわよ。言いなさいよ」
「う〜ん、、、。あっこ姉さんが警察に言うのがどうしてもイヤなら、うってつけの男がいるなあ、と」
「何者なの?」
「探偵です。でも、やっぱりやめておきましょう」
「なんでよ。能力的に問題があるの?」
「いや、悔しいんですが頭の回転はかなり早いヤツです。でも、ものすごい嫌なヤツですよ。口はへらないし、理屈は多いし、僕は大っっ嫌いです」
「なによそれ。でも探偵って興味あるわね。ちょっと電話してみてよ」
田中の背中を押して催促するおのあきこ。
「マジですか〜?たしかこの前貰った名刺がこの辺に、、、ああ、ありました。見てくださいよこの名刺。ふざけてるでしょ?」
「ん?『粗野な探偵・東桂寺汰霧』??なにこれ(笑)」
「腹立つでしょ?じゃあまあ、、、あ、もしもし?ごぶさたしてますfm GIGの田中です。え?いや、こないだの事件でお世話になった、、、いえ違います、、、あ、そうそう、その田中です、、、あいかわらず空気が読めてないのかって失礼なあなた、、、いや実はかくかくしかじかな事件があって、、、いえ、まだ警察には知らせてないです、、、え?なんて失礼なことを言うんですか!、、、困ってる人がいるなら助けるのがあなたの仕事でしょう!?、、、信じられない!それでも探偵ですかあなた!!、、、もう頼みませんよ!ガチャン!!、、、あ〜、やっぱり腹の立つ男だ!!」
「どうしたのよ(笑)」
「どうもこうもないですよ。まずは警察に行って、それでも解けない謎なら呼んでください。それに、暴行未遂のような知的水準の低い野蛮な事件には魅力が無い、ですって」
苦虫を噛み潰したような表情で呻く田中。
「あはは。面白い人ね。、、、、、いいわ。警察に知らせましょ」
「へ?どうしたんですか急に」
「だって、警察が解決できなかったらその人に会えるんでしょ?興味あるわ」
「あっこ姉さん、チャレンジャーですねえ!でも会うときっと後悔しますよ。間違いなく!絶対に!!」
(つづく)
何が起きたのかわからなかった。我に返ると目の前にはカラカラと空回りする自転車の車輪。あ〜、転んだのか、、、立たなきゃ、、、
そう思った瞬間、黒い目出し帽で覆面をした何者かに覆いかぶさられ、厚手の大きな革製の手袋をした右手に口と鼻を塞がれた。苦しい!息ができない!!
薄れ行く意識の中で、それでもまだしっかりと自分に言い聞かせていた。
「助けを呼ばなきゃ!大きな声で叫べば、きっと誰かが助けに、、、」
でも、状況が飲み込めていけばいくほど、反作用で声が出ない。恐怖で気が狂いそうになった時、左手がジーンズに伸びてきた。ボタンが外され、ファスナーを下ろされる感覚。
「い、いや、、、やめて、、」
思わず声が出た。ん?声が出る!今だわ!!
自分の口を塞いでいた右手をはらいのけようと力を込めると、拍子抜けするほどいとも簡単に振りほどけた。
「誰か助けて!誰か!誰か助けて!!」
まるでその叫びを待っていたかのような驚くべき素早さで何者かが走り去って行った。
「助かった、、、」
泥だらけになったまま座り込んで安堵の溜め息をもらす。ん?肩が痛い。突き飛ばされた瞬間に怪我をしたんだろうか。血が流れている。
安心と恐怖が蘇り、涙が止まらなかった。でも、目出し帽の奥で光ってたあの眼。絶対にどこかで見た事があると確信した。
いったいどこで?、、、、、
「ひどい目に遭いましたね〜」
田中が軽い調子で言う。昼の生放送が終わったfm GIGのスタジオ内で雑談する二人。
「ちょっと。もっとちゃんと心配してくれたらどう?ほんとに怖かったんだから!」
「わかってますってば。危ないところで助かったんでしょ?本当に良かったですね。でも、、、」
「なに?」
「あっこ姉さんを襲うなんて、犯人もいい根性してますね。ははは」
「なぐるわよ、ビっツ!」
「冗談ですよ。で、ちゃんと警察には行ったんでしょう?」
「ううん」
「どうして!?駄目じゃないですか!」
「いいの。面倒だし、どうせ犯人なんて捕まえられないし」
「でも怪我までさせられて、そんな危ない目に遭ったのに!」
包帯で覆われた肩をさすりながら、おのあきこは言う。
「いいんだってば。話を大きくして皆に心配かけたくないし」
「もう!おかしなところで律儀なんだから、、、。あ!あ、、、いや、やめとこう」
「なによ」
「なんでもないです」
「本当になぐるわよ。言いなさいよ」
「う〜ん、、、。あっこ姉さんが警察に言うのがどうしてもイヤなら、うってつけの男がいるなあ、と」
「何者なの?」
「探偵です。でも、やっぱりやめておきましょう」
「なんでよ。能力的に問題があるの?」
「いや、悔しいんですが頭の回転はかなり早いヤツです。でも、ものすごい嫌なヤツですよ。口はへらないし、理屈は多いし、僕は大っっ嫌いです」
「なによそれ。でも探偵って興味あるわね。ちょっと電話してみてよ」
田中の背中を押して催促するおのあきこ。
「マジですか〜?たしかこの前貰った名刺がこの辺に、、、ああ、ありました。見てくださいよこの名刺。ふざけてるでしょ?」
「ん?『粗野な探偵・東桂寺汰霧』??なにこれ(笑)」
「腹立つでしょ?じゃあまあ、、、あ、もしもし?ごぶさたしてますfm GIGの田中です。え?いや、こないだの事件でお世話になった、、、いえ違います、、、あ、そうそう、その田中です、、、あいかわらず空気が読めてないのかって失礼なあなた、、、いや実はかくかくしかじかな事件があって、、、いえ、まだ警察には知らせてないです、、、え?なんて失礼なことを言うんですか!、、、困ってる人がいるなら助けるのがあなたの仕事でしょう!?、、、信じられない!それでも探偵ですかあなた!!、、、もう頼みませんよ!ガチャン!!、、、あ〜、やっぱり腹の立つ男だ!!」
「どうしたのよ(笑)」
「どうもこうもないですよ。まずは警察に行って、それでも解けない謎なら呼んでください。それに、暴行未遂のような知的水準の低い野蛮な事件には魅力が無い、ですって」
苦虫を噛み潰したような表情で呻く田中。
「あはは。面白い人ね。、、、、、いいわ。警察に知らせましょ」
「へ?どうしたんですか急に」
「だって、警察が解決できなかったらその人に会えるんでしょ?興味あるわ」
「あっこ姉さん、チャレンジャーですねえ!でも会うときっと後悔しますよ。間違いなく!絶対に!!」
(つづく)
2006年5月23日(火) at 15:18
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(最終話)・宿命の炎 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
2006年2月15日(水) at 12:52
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(9)・最後の一撃 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
2006年2月13日(月) at 14:40
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(8)・嘆きの刻印 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
2006年2月6日(月) at 15:58
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(7)・死の瞬間 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
2006年1月27日(金) at 17:47
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(6)・静寂の果て / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
2006年1月22日(日) at 12:29
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(5)・嵐の予兆 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
2人分のコーヒーを手にスタジオに戻って来る田中。1つを東桂寺に手渡しながら言う。
「見つかるわけがないですって?無いものを探しに刑事を向かわせたんですか?」
カップを左手で受け取り、右手でパソコンのキーボードを無造作に叩きながら東桂寺が言う。
「かまいやしません。捜査会議なんて彼らには無駄なんです。100回やったって彼らにはこの謎は解けませんよ。そもそもね、、、」
田中に言う東桂寺。
「そもそも人間ってのは『頭を使う人間』と『体を使う人間』の2パターンしかいないんですよ。や、どちらが上とか下とかじゃなくって、タイプの違いですがね。『頭を使う人間』が『体を使う職場』にいると役には立たないし、逆もまたそうです。自分の適性を見極めるのが重要なんですよ。それで言うと彼らは典型的な後者です。彼らが会議室に閉じこもっていくら頭を使っても、増えるのは無実の容疑者だけです。僕にはもう『たった一人』の犯人が解ったし、あとは彼らがその証明をしてくれればいいんです」
不服そうに田中が言う。
「『頭を使う人間』っていうのはたぶん芸術家みたいな人の事でしょう?でもよくあるじゃないですか。例えば、映画監督を目指しててアルバイトで肉体労働とか、音楽をやってて生活のために遺跡発掘のバイトをやるとか。そのケースはどうなんですか?」
「そりゃ大人なんだからしばらくやってりゃ畑違いの仕事でもそこそこは出来ますよ。でもね田中さん。真の悲劇はそれなんです。『そこそこの環境からはなかなか抜け出せない』ってね。『そこそこの待遇』と『そこそこの楽しみ』に長年埋もれていると、今の自分の環境がまるで唯一無二の幸福のように錯覚するんですよ。どちらの世界からも『そこそこの期待しかされていない』ってのにです。馬鹿げてますよねえ。傍から見ればそれは単に怠けているだけだし、何もかもが中途半端な敗残者なんです。それにね、そういう連中は時間の経過を計算に入れていない。年齢を重ねると体力だけじゃなく脳も衰えていくんですよ?いずれなんとかなるなんて言ってると、その頃にはアーティスティックな事なんて何も生み出せなくなってますよ。そんなぬるい環境にいつまでもしがみついてる連中が40を目前にし、50になった頃にいったいどんな言い訳をするのかが楽しみで仕方ないですよ、僕は」
嬉しそうに言う東桂寺をあきれた表情で見る田中。
苦虫を噛み潰した顔で田中が言う。
「すごい決めつけた言い方ですねえ。なんだかあなたと話してると腹が立ってきますよ。嫌われてるでしょ?あなた」
「よく言われますよ。気になんかしちゃいませんから、どうぞご自由に嫌ってください。あ、電話ですよ、田中さん。たぶん土屋刑事です。ほら出て。やれ出て。モタモタしないで。ゆっくりなら子供でもできる」
凄い形相で東桂寺を睨み付けながら電話に出る田中。
「はいもしもしfm GIGです。ああはい。少々お待ちください」
「土屋さんでしょ?」
「いや、森山と名乗ってますけど」
「森山刑事?親玉の登場ですね。代わってください。早く受話器をこっちに貸して。さっさと。何をしてるんですか田中さん。ぐず。のろま。はい東桂寺です。老眼鏡なんか無かったって?何を勝ち誇ってるんですか。なんです?お前の推理なんかあてにならないじゃないかですって??もう、あなたと話していると疲れるんですよ。もう少し引っぱろうと思ってましたがわかりました、犯人をお教えしましょう。え?今から??今日はだめです。明日もいけませんねえ。土曜日にしましょう。それまでに森山刑事はタミさんの二人の子供のどちらかに離婚歴があるのを確認しておいてください。事件に関係があるのか??あるに決まってるじゃないですか。え?もたもたしてる間に犯人に逃げられたらどうするって??それはまず大丈夫です。じゃ土曜日にfm GIGのスタジオで。へ?ほえづらなんてかきませんよ、僕は。じゃ。、、、、、は〜、こう言う人種と話すとどっと疲れますねえ。じゃ僕は帰ります。お忙しい中お邪魔しました。では土曜日にまた」
「あ、ちょっと待ってください!」
田中が呼び止める。
「さっき、人間は2つのパターンしかないとおっしゃってましたよね?なら僕はどちらのタイプだと思われますか?『頭を使うべき』なのか『体を使うべき』なのか」
帰り支度をしながら東桂寺が言う。
「今日会ったばかりなのにそんなことわかりゃしませんよ。いや、言うべきじゃないって感じですかねえ、、、、、。じゃ。コーヒーごちそうさまでした」
「あ!コーヒー代は青いぶたさんの貯金箱に入れてください!!」
「本当にしっかりしてますねえ。や、ほめてるんですってば」
ここでストップ!
さてこの台詞も二回目。賢明な読者には今度こそ犯人は特定できたであろう。
もう一度言うが、犯人を特定するのにfm GIGに関して特別な知識などは一切必要無いし、内輪ネタなども一切無い。純粋に「推理読物」として成立してるのである。
謎を解くカギは、
★『TC,UM.RX,YVNJ.TI,FK,8B.』のダイイング・メッセージ
★fm GIGという謎の集団(容疑者リスト)
★殺された丸山タミの稚拙なブログ
★現場から消えた老眼鏡
くどいようだが、犯人を特定できるヒントは以前にも増して読者の眼前に既に突き付けられているのだ。ここはかの有名なあの台詞を口にする誘惑を筆者は禁じ得ない。再度言おう。
私は読者に挑戦する!
「見つかるわけがないですって?無いものを探しに刑事を向かわせたんですか?」
カップを左手で受け取り、右手でパソコンのキーボードを無造作に叩きながら東桂寺が言う。
「かまいやしません。捜査会議なんて彼らには無駄なんです。100回やったって彼らにはこの謎は解けませんよ。そもそもね、、、」
田中に言う東桂寺。
「そもそも人間ってのは『頭を使う人間』と『体を使う人間』の2パターンしかいないんですよ。や、どちらが上とか下とかじゃなくって、タイプの違いですがね。『頭を使う人間』が『体を使う職場』にいると役には立たないし、逆もまたそうです。自分の適性を見極めるのが重要なんですよ。それで言うと彼らは典型的な後者です。彼らが会議室に閉じこもっていくら頭を使っても、増えるのは無実の容疑者だけです。僕にはもう『たった一人』の犯人が解ったし、あとは彼らがその証明をしてくれればいいんです」
不服そうに田中が言う。
「『頭を使う人間』っていうのはたぶん芸術家みたいな人の事でしょう?でもよくあるじゃないですか。例えば、映画監督を目指しててアルバイトで肉体労働とか、音楽をやってて生活のために遺跡発掘のバイトをやるとか。そのケースはどうなんですか?」
「そりゃ大人なんだからしばらくやってりゃ畑違いの仕事でもそこそこは出来ますよ。でもね田中さん。真の悲劇はそれなんです。『そこそこの環境からはなかなか抜け出せない』ってね。『そこそこの待遇』と『そこそこの楽しみ』に長年埋もれていると、今の自分の環境がまるで唯一無二の幸福のように錯覚するんですよ。どちらの世界からも『そこそこの期待しかされていない』ってのにです。馬鹿げてますよねえ。傍から見ればそれは単に怠けているだけだし、何もかもが中途半端な敗残者なんです。それにね、そういう連中は時間の経過を計算に入れていない。年齢を重ねると体力だけじゃなく脳も衰えていくんですよ?いずれなんとかなるなんて言ってると、その頃にはアーティスティックな事なんて何も生み出せなくなってますよ。そんなぬるい環境にいつまでもしがみついてる連中が40を目前にし、50になった頃にいったいどんな言い訳をするのかが楽しみで仕方ないですよ、僕は」
嬉しそうに言う東桂寺をあきれた表情で見る田中。
苦虫を噛み潰した顔で田中が言う。
「すごい決めつけた言い方ですねえ。なんだかあなたと話してると腹が立ってきますよ。嫌われてるでしょ?あなた」
「よく言われますよ。気になんかしちゃいませんから、どうぞご自由に嫌ってください。あ、電話ですよ、田中さん。たぶん土屋刑事です。ほら出て。やれ出て。モタモタしないで。ゆっくりなら子供でもできる」
凄い形相で東桂寺を睨み付けながら電話に出る田中。
「はいもしもしfm GIGです。ああはい。少々お待ちください」
「土屋さんでしょ?」
「いや、森山と名乗ってますけど」
「森山刑事?親玉の登場ですね。代わってください。早く受話器をこっちに貸して。さっさと。何をしてるんですか田中さん。ぐず。のろま。はい東桂寺です。老眼鏡なんか無かったって?何を勝ち誇ってるんですか。なんです?お前の推理なんかあてにならないじゃないかですって??もう、あなたと話していると疲れるんですよ。もう少し引っぱろうと思ってましたがわかりました、犯人をお教えしましょう。え?今から??今日はだめです。明日もいけませんねえ。土曜日にしましょう。それまでに森山刑事はタミさんの二人の子供のどちらかに離婚歴があるのを確認しておいてください。事件に関係があるのか??あるに決まってるじゃないですか。え?もたもたしてる間に犯人に逃げられたらどうするって??それはまず大丈夫です。じゃ土曜日にfm GIGのスタジオで。へ?ほえづらなんてかきませんよ、僕は。じゃ。、、、、、は〜、こう言う人種と話すとどっと疲れますねえ。じゃ僕は帰ります。お忙しい中お邪魔しました。では土曜日にまた」
「あ、ちょっと待ってください!」
田中が呼び止める。
「さっき、人間は2つのパターンしかないとおっしゃってましたよね?なら僕はどちらのタイプだと思われますか?『頭を使うべき』なのか『体を使うべき』なのか」
帰り支度をしながら東桂寺が言う。
「今日会ったばかりなのにそんなことわかりゃしませんよ。いや、言うべきじゃないって感じですかねえ、、、、、。じゃ。コーヒーごちそうさまでした」
「あ!コーヒー代は青いぶたさんの貯金箱に入れてください!!」
「本当にしっかりしてますねえ。や、ほめてるんですってば」
ここでストップ!
さてこの台詞も二回目。賢明な読者には今度こそ犯人は特定できたであろう。
もう一度言うが、犯人を特定するのにfm GIGに関して特別な知識などは一切必要無いし、内輪ネタなども一切無い。純粋に「推理読物」として成立してるのである。
謎を解くカギは、
★『TC,UM.RX,YVNJ.TI,FK,8B.』のダイイング・メッセージ
★fm GIGという謎の集団(容疑者リスト)
★殺された丸山タミの稚拙なブログ
★現場から消えた老眼鏡
くどいようだが、犯人を特定できるヒントは以前にも増して読者の眼前に既に突き付けられているのだ。ここはかの有名なあの台詞を口にする誘惑を筆者は禁じ得ない。再度言おう。
私は読者に挑戦する!
2005年12月24日(土) at 16:30
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(4)・迷宮の出口 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
目を見張るような美しい女性がスタジオを後にするのを見送りながら東桂寺はしばし呆然としていた。
見かねた田中が言う。
「ちょ、ちょっと、どうしたんですか?」
「ものすごい美人ですねえ。好みのタイプです。誰です?」
「あなた名簿を持ってるじゃないですか。われらがfm GIGでは曜日ごとに女性DJが変わるんです。え〜っと、今日の曜日は、、、って、あなた、何しに来たんですか!」
「冗談ですよ。いちいち真に受ける人ですねえ。さ、さっさとタミさんのブログを見せてください」
「なんだか癇に障る人ですねえ、あなたは。ちょっと待ってくださいよ、、、はい、これです」
★○月×日
みなさんはじめまして.エフエムぎぐが大好きな私がdjのみんなを紹介します.よろしく.
★○月△日
火曜日です.
シヨウキくん,あまりお酒を飲み過ぎては体に毒ですよ.
タクマくん,毎日スタジオでご苦労さま.
ヒロキくん,やれば出来る人ですね.いつもその調子でね.
リヨウくん,最近機が抜けてるようですね.もつとがんばつてね.
ヨシトくん,男前で大好きですよ.死んだおじいさんの若い時を思い出します.
カズヨちやん,怒り←にいじめられていませんか.負けるな,負けるな.
「これがタミさんのブログ?マジで??」
「マジですよ。どうしてですか?」
「タミさんの部屋は最新型のパソコンに囲まれてて、そんじょそこらの素人には理解出来ないような専門的な雑誌もたくさんあったんです。その上に教室にも通ってたんでしょ?」
「ああ。パソコン教室は初級者コースで、しかも、確か一度しか行ってないはずです。警察の方にはちゃんとそうお話しましたよ」
それを聞いた東桂寺は土屋刑事から送られたFAXにもう一度目を通す。
『被害者の部屋にはパソコンの専門雑誌・専用機器が多数有り。さらに有名なパソコン教室にも登録している。パソコン・インターネットに対してかなりの知識があると見られる。(中略)ただし一度しか通っていないので教室内での人間関係は希薄と見られる』
FAXと丸山タミのブログを交互に見ながら、時折天を見上げ、しばし目を閉じる東桂寺。その様子をイライラした様子で見守る田中。
「あの、もしもし?東桂寺さん??」
「、、、、、」
「いやあの、そろそろ夜の生放送の用意があるので、、、」
「、、、、、」
「いやだから」
「うひゃひゃひゃひゃ!!なははははは!!僕は馬鹿でしたよ!!」
「!?へ?あ、な、なんですか!?」
「あ〜っはっはっは!!なんて僕は馬鹿なんでしょう!笑うしかないですよ、これは!爆笑です!何をしてるんですか田中さん、そんなところで腰を抜かして。笑ってください、この僕を。いや、人間にそもそも備え付けられている先入観ってやつを!いや〜、笑い過ぎて腹筋がぶち切れそうです。あ〜、おかしかった。田中さんも面白かったでしょ?」
「ふは、な、あ、あなた大丈夫ですか!?」
「え?何がです??いや、ありがとうございました田中さん。助かりました。全て謎が解けました。田中さんのおかげですよ。抱きしめたい気分です。抱きしめてキスしたい衝動にかられてますよ、僕は。さ、僕はこのまま帰ってるり渓温泉に行ってもいいんですが、そういうわけにもいきますまい。一応確認をとっておきましょう。電話、ありますか?」
「あ、ああ、はい。一応電話代はいただきますよ。横の青いぶたさん貯金箱に入れておいてください」
「しっかりしてますねえ。や、ほめてるんですよと。あ、もしもし土屋さんですか?」
新京都署の土屋刑事に電話をする東桂寺。
「ああ東桂寺さん!どうですか進展は?こっちも大変なことがわかったんですよ。実はfm GIGのメンバーの数人のアリバイが不明でして、それで、、、」
「ちょっちょっちょっ!何を悠長なことを言ってるんですか。土屋さんは今どこに?」
「あ、署に戻って捜査会議を、、、」
「そんなのどうでもいいですよ。大至急タミさんの部屋に行ってメガネを探してください」
「は!?なんですか?メガネ??どんな???」
「ちょっともう、、、。無為な捜査会議なんかに貴重な時間を割いたりなんかするから、どんどん脳細胞が破壊されていくんですよ。86才の老婆のメガネと言えば老眼鏡に決まってるでしょう?」
「老眼鏡、ですか??」
「何度も言わせないでください。あ、予備で使ってるようなのではなくって、ちゃんと日常で使ってるやつですよ」
「ああはい。よくわかりませんが、今から急行して探します。じゃ後ほど」
スタジオ内に流れている古いロックナンバーに合わせて上機嫌でリズムを刻む東桂寺。田中が聞く。
「東桂寺さん。老眼鏡、ですか?」
「ああ、田中さん。まだいたんですか?って、僕がお邪魔してたんですね。忘れてましたよ。聞いてたんですね?そうです。老眼鏡です」
「老眼鏡が現場から見つかると、そこに犯人のヒントがあると。そういうことですね」
息をのむ田中。
「へ?何を言ってるんですか田中さんまで」
あきれ顔で言うその後の東桂寺のセリフは意表を衝いていた。
「僕の推理が確かなら見つかるわけが無いんですよ!!」
見かねた田中が言う。
「ちょ、ちょっと、どうしたんですか?」
「ものすごい美人ですねえ。好みのタイプです。誰です?」
「あなた名簿を持ってるじゃないですか。われらがfm GIGでは曜日ごとに女性DJが変わるんです。え〜っと、今日の曜日は、、、って、あなた、何しに来たんですか!」
「冗談ですよ。いちいち真に受ける人ですねえ。さ、さっさとタミさんのブログを見せてください」
「なんだか癇に障る人ですねえ、あなたは。ちょっと待ってくださいよ、、、はい、これです」
★○月×日
みなさんはじめまして.エフエムぎぐが大好きな私がdjのみんなを紹介します.よろしく.
★○月△日
火曜日です.
シヨウキくん,あまりお酒を飲み過ぎては体に毒ですよ.
タクマくん,毎日スタジオでご苦労さま.
ヒロキくん,やれば出来る人ですね.いつもその調子でね.
リヨウくん,最近機が抜けてるようですね.もつとがんばつてね.
ヨシトくん,男前で大好きですよ.死んだおじいさんの若い時を思い出します.
カズヨちやん,怒り←にいじめられていませんか.負けるな,負けるな.
「これがタミさんのブログ?マジで??」
「マジですよ。どうしてですか?」
「タミさんの部屋は最新型のパソコンに囲まれてて、そんじょそこらの素人には理解出来ないような専門的な雑誌もたくさんあったんです。その上に教室にも通ってたんでしょ?」
「ああ。パソコン教室は初級者コースで、しかも、確か一度しか行ってないはずです。警察の方にはちゃんとそうお話しましたよ」
それを聞いた東桂寺は土屋刑事から送られたFAXにもう一度目を通す。
『被害者の部屋にはパソコンの専門雑誌・専用機器が多数有り。さらに有名なパソコン教室にも登録している。パソコン・インターネットに対してかなりの知識があると見られる。(中略)ただし一度しか通っていないので教室内での人間関係は希薄と見られる』
FAXと丸山タミのブログを交互に見ながら、時折天を見上げ、しばし目を閉じる東桂寺。その様子をイライラした様子で見守る田中。
「あの、もしもし?東桂寺さん??」
「、、、、、」
「いやあの、そろそろ夜の生放送の用意があるので、、、」
「、、、、、」
「いやだから」
「うひゃひゃひゃひゃ!!なははははは!!僕は馬鹿でしたよ!!」
「!?へ?あ、な、なんですか!?」
「あ〜っはっはっは!!なんて僕は馬鹿なんでしょう!笑うしかないですよ、これは!爆笑です!何をしてるんですか田中さん、そんなところで腰を抜かして。笑ってください、この僕を。いや、人間にそもそも備え付けられている先入観ってやつを!いや〜、笑い過ぎて腹筋がぶち切れそうです。あ〜、おかしかった。田中さんも面白かったでしょ?」
「ふは、な、あ、あなた大丈夫ですか!?」
「え?何がです??いや、ありがとうございました田中さん。助かりました。全て謎が解けました。田中さんのおかげですよ。抱きしめたい気分です。抱きしめてキスしたい衝動にかられてますよ、僕は。さ、僕はこのまま帰ってるり渓温泉に行ってもいいんですが、そういうわけにもいきますまい。一応確認をとっておきましょう。電話、ありますか?」
「あ、ああ、はい。一応電話代はいただきますよ。横の青いぶたさん貯金箱に入れておいてください」
「しっかりしてますねえ。や、ほめてるんですよと。あ、もしもし土屋さんですか?」
新京都署の土屋刑事に電話をする東桂寺。
「ああ東桂寺さん!どうですか進展は?こっちも大変なことがわかったんですよ。実はfm GIGのメンバーの数人のアリバイが不明でして、それで、、、」
「ちょっちょっちょっ!何を悠長なことを言ってるんですか。土屋さんは今どこに?」
「あ、署に戻って捜査会議を、、、」
「そんなのどうでもいいですよ。大至急タミさんの部屋に行ってメガネを探してください」
「は!?なんですか?メガネ??どんな???」
「ちょっともう、、、。無為な捜査会議なんかに貴重な時間を割いたりなんかするから、どんどん脳細胞が破壊されていくんですよ。86才の老婆のメガネと言えば老眼鏡に決まってるでしょう?」
「老眼鏡、ですか??」
「何度も言わせないでください。あ、予備で使ってるようなのではなくって、ちゃんと日常で使ってるやつですよ」
「ああはい。よくわかりませんが、今から急行して探します。じゃ後ほど」
スタジオ内に流れている古いロックナンバーに合わせて上機嫌でリズムを刻む東桂寺。田中が聞く。
「東桂寺さん。老眼鏡、ですか?」
「ああ、田中さん。まだいたんですか?って、僕がお邪魔してたんですね。忘れてましたよ。聞いてたんですね?そうです。老眼鏡です」
「老眼鏡が現場から見つかると、そこに犯人のヒントがあると。そういうことですね」
息をのむ田中。
「へ?何を言ってるんですか田中さんまで」
あきれ顔で言うその後の東桂寺のセリフは意表を衝いていた。
「僕の推理が確かなら見つかるわけが無いんですよ!!」
2005年12月20日(火) at 02:27
[本格推理読物]fm GIG殺人事件(3)・死神の微笑 / "SuperStroke"TAM
本 > 名探偵・東桂寺汰霧シリーズ
東桂寺は土屋刑事から送られてきた事件の概要を記すFAXに目を通しながら、fm GIGのスタジオを目指して商店街を歩いていた。
最新型パソコンと専門誌に囲まれた一室で殺された86才の老婆、犯人がいると思われるfm GIGという謎の集団。
ところが、東桂寺が推理に頭を巡らせる暇もなくスタジオに到着してしまう。時間にして殺害現場から徒歩で約5分。これではアリバイの立証もままなるまい、、、。
夕方6時過ぎ。東桂寺がスタジオをノックして入ると、すぐ見渡せる中に男性がいた。
「あの、ごめんください」
「はいはい!え〜と、、、」
「あ、すいません。冴沢さん、ですか?」
「冴沢さんは今撮影で留守でして。あ、田中と言います」
「ああ。え〜っとですねえ、、、」
「ひょっとして、DJ志望の方ですか?それなら僕が代わりに話を聞きますよ」
田中と名乗る男が満面の愛想笑いを浮かべて言った。
「や、そうじゃなくって、あの、、、」
「あ!ならスポンサーになっていただける企業の方とか」
愛想笑いは最高潮に達した。
「でもなくて、殺された丸山タミさんのことで、、、」
愛想笑いが消え、田中の顔に緊張が走るのが見てとれた。
「警察の方、、、ですか?」
「厳密に言うと違いますが、まあ似たようなものです」
「、、、、、。まあどうぞ」
スタジオの内部はおよそラジオ局のイメージとはかけ離れた雰囲気であった。こちらからは見えない衝立の向こうには女性が一人いるようだ。
「あまり時間も無いので端的に聞きます。丸山タミさんはどんな人でしたか?どういった経緯でこのスタジオに出入りするようになったんですか?」
「経緯も何も、半年ぐらい前に突然手土産を持って来られたんですよ。たまたまタクシーで聞いてファンになったって。それで、パソコンで聴きたいっていうので僕や冴沢さんがいろいろ教えてあげたりして。それからは週に何度か、差し入れを持って遊びに来られてました」
そう話す田中の顔からは完全に笑みが消えていた。
「迷惑じゃなかったんですか?」
「う〜ん。長居はしないし、放送の邪魔になるようなことも一切無かったんでね。ウチのメンバー全員ともすぐ仲良くなりましたよ」
「全員?」
「そう。タミさんのパソコンがトラブった時も、手が空いてるメンバーが直しに行ったりなんかもして」
「タミさんの部屋に行った事があるのは誰と誰ですか?」
「え〜っと。全員」
「全員?嘘でしょ?」
「なんで僕が嘘を!一度メンバー全員を招待してくれたんですよ。食事を作るからって。それで」
この時点で容疑者を何人かに絞るつもりだった東桂寺は完全に目論みがはずれた。
「他に何かありませんか?どんな些細な事でも結構です」
「何にもありませんって。僕にもよく『たくまさんも毎日スタジオに来て大変だねえ』って言ってくれてたし」
「『たくまさん』?ここにはあなたの事は『ビっツ!田中』って書いてますよ??」
「ああ。一度僕が『もう一つ名前があるんですよ。田中逞馬っていうんです』って言ったら、それ以来ずっと。あ!!」
「なんです?」
「そう言えばタミさんは皆をいつも下の名前で呼んでましたね。『あっこちゃん』とか『あすかちゃん』とか。冴沢さんにまで『しょうき君』って」
東桂寺の頭の中で何かが走った。下の名前?
「それともう一つ聞きたいことがあります。タミさんは自分のブログを持ってますね?」
「え!?どうしてそれを??誰にも、どこにも言ってないのに」
「タミさんの部屋からホームページ作成のマニュアル本が出てきたんです。断念したようでしたけどね。なら、次に手を出すのはブログです。察するに、fm GIGのファンサイト的なブログでしょう。ちょうどここにはパソコンもあります。見せてくれませんか?」
その時、衝立の奥にいた女性が姿を見せた。
「ビっツさん、お先に失礼します。来週も同じ時間でいいですよね♪」
「ああ、はい。今日の生放送も良かったですよ。じゃ」
あくまでも透き通るその声と、愛くるしい眼をしたその女性に、東桂寺は衝撃を覚えた。
fm GIGにはこんなに美しい女性がいるのか!!
最新型パソコンと専門誌に囲まれた一室で殺された86才の老婆、犯人がいると思われるfm GIGという謎の集団。
ところが、東桂寺が推理に頭を巡らせる暇もなくスタジオに到着してしまう。時間にして殺害現場から徒歩で約5分。これではアリバイの立証もままなるまい、、、。
夕方6時過ぎ。東桂寺がスタジオをノックして入ると、すぐ見渡せる中に男性がいた。
「あの、ごめんください」
「はいはい!え〜と、、、」
「あ、すいません。冴沢さん、ですか?」
「冴沢さんは今撮影で留守でして。あ、田中と言います」
「ああ。え〜っとですねえ、、、」
「ひょっとして、DJ志望の方ですか?それなら僕が代わりに話を聞きますよ」
田中と名乗る男が満面の愛想笑いを浮かべて言った。
「や、そうじゃなくって、あの、、、」
「あ!ならスポンサーになっていただける企業の方とか」
愛想笑いは最高潮に達した。
「でもなくて、殺された丸山タミさんのことで、、、」
愛想笑いが消え、田中の顔に緊張が走るのが見てとれた。
「警察の方、、、ですか?」
「厳密に言うと違いますが、まあ似たようなものです」
「、、、、、。まあどうぞ」
スタジオの内部はおよそラジオ局のイメージとはかけ離れた雰囲気であった。こちらからは見えない衝立の向こうには女性が一人いるようだ。
「あまり時間も無いので端的に聞きます。丸山タミさんはどんな人でしたか?どういった経緯でこのスタジオに出入りするようになったんですか?」
「経緯も何も、半年ぐらい前に突然手土産を持って来られたんですよ。たまたまタクシーで聞いてファンになったって。それで、パソコンで聴きたいっていうので僕や冴沢さんがいろいろ教えてあげたりして。それからは週に何度か、差し入れを持って遊びに来られてました」
そう話す田中の顔からは完全に笑みが消えていた。
「迷惑じゃなかったんですか?」
「う〜ん。長居はしないし、放送の邪魔になるようなことも一切無かったんでね。ウチのメンバー全員ともすぐ仲良くなりましたよ」
「全員?」
「そう。タミさんのパソコンがトラブった時も、手が空いてるメンバーが直しに行ったりなんかもして」
「タミさんの部屋に行った事があるのは誰と誰ですか?」
「え〜っと。全員」
「全員?嘘でしょ?」
「なんで僕が嘘を!一度メンバー全員を招待してくれたんですよ。食事を作るからって。それで」
この時点で容疑者を何人かに絞るつもりだった東桂寺は完全に目論みがはずれた。
「他に何かありませんか?どんな些細な事でも結構です」
「何にもありませんって。僕にもよく『たくまさんも毎日スタジオに来て大変だねえ』って言ってくれてたし」
「『たくまさん』?ここにはあなたの事は『ビっツ!田中』って書いてますよ??」
「ああ。一度僕が『もう一つ名前があるんですよ。田中逞馬っていうんです』って言ったら、それ以来ずっと。あ!!」
「なんです?」
「そう言えばタミさんは皆をいつも下の名前で呼んでましたね。『あっこちゃん』とか『あすかちゃん』とか。冴沢さんにまで『しょうき君』って」
東桂寺の頭の中で何かが走った。下の名前?
「それともう一つ聞きたいことがあります。タミさんは自分のブログを持ってますね?」
「え!?どうしてそれを??誰にも、どこにも言ってないのに」
「タミさんの部屋からホームページ作成のマニュアル本が出てきたんです。断念したようでしたけどね。なら、次に手を出すのはブログです。察するに、fm GIGのファンサイト的なブログでしょう。ちょうどここにはパソコンもあります。見せてくれませんか?」
その時、衝立の奥にいた女性が姿を見せた。
「ビっツさん、お先に失礼します。来週も同じ時間でいいですよね♪」
「ああ、はい。今日の生放送も良かったですよ。じゃ」
あくまでも透き通るその声と、愛くるしい眼をしたその女性に、東桂寺は衝撃を覚えた。
fm GIGにはこんなに美しい女性がいるのか!!


