久々に… / HN TASHKENT
『クルスク大戦車戦』(上・下) デイヴィッド・L・ロビンズ (新潮文庫) / HN TASHKENT
本 > 国外小説(翻訳)
年明け早々に入手し、1月の約1ヶ月間で楽しく読了した。
第2次大戦の最中、ソ連へ侵攻したドイツ軍が、ロシア征服を断念し、防戦に転じる切っ掛けになったクルスクの戦いを描いたものである。
以前に同じ作者による、ベルリン陥落を描いたものを読んでいたので期待して頁を開いたが、期待は裏切られなかった!!
大きな戦いの大局を、全体を把握し得る司令官や参謀の目線で描くのではなく、現場を駆け抜けた男女の目線で綿々と綴っている力作である。
ソ連側は、コサックの村の出の老戦車兵と、同じ戦車に乗っている息子の下士官、そして旧式の飛行機で夜間に独軍陣地への爆撃を試みている飛行隊に居る戦車兵の娘という人達の目線で綴られる。ドイツ側は、親衛隊に参加しているスペイン人将校や、ソ連側に密かに情報を流している情報将校の目線で描かれる。
名誉、勝利、生き残りを求め、それぞれの劇中人物達が過酷な戦場を駆ける…老戦車兵のT34戦車と、スペイン人将校のタイガー戦車…最後は戦場で邂逅するのだが、両者の対決は読み応えがあった…
巻末の解説によれば、著者は現存するT34に試乗してみるなどし、そうした経験も描写に反映されているようだ…
第2次大戦の最中、ソ連へ侵攻したドイツ軍が、ロシア征服を断念し、防戦に転じる切っ掛けになったクルスクの戦いを描いたものである。
以前に同じ作者による、ベルリン陥落を描いたものを読んでいたので期待して頁を開いたが、期待は裏切られなかった!!
大きな戦いの大局を、全体を把握し得る司令官や参謀の目線で描くのではなく、現場を駆け抜けた男女の目線で綿々と綴っている力作である。
ソ連側は、コサックの村の出の老戦車兵と、同じ戦車に乗っている息子の下士官、そして旧式の飛行機で夜間に独軍陣地への爆撃を試みている飛行隊に居る戦車兵の娘という人達の目線で綴られる。ドイツ側は、親衛隊に参加しているスペイン人将校や、ソ連側に密かに情報を流している情報将校の目線で描かれる。
名誉、勝利、生き残りを求め、それぞれの劇中人物達が過酷な戦場を駆ける…老戦車兵のT34戦車と、スペイン人将校のタイガー戦車…最後は戦場で邂逅するのだが、両者の対決は読み応えがあった…
巻末の解説によれば、著者は現存するT34に試乗してみるなどし、そうした経験も描写に反映されているようだ…
2006年2月17日(金) at 19:25
『パイロットの妻』 アニータ・シュリーヴ (新潮文庫) / HN TASHKENT
本 > 国外小説(翻訳)
非常に身近な人に関してさえも“知られざる一面”というものはあるのだと思う…この作品は、そういう“知られざる一面”が衝撃的な事件を切っ掛けに明らかになるというお話しだ…
主人公は題名のとおり、パイロットの妻である。夫であるパイロットが乗務していた飛行機が謎の空中爆発を起こして墜落してしまった…衝撃を受ける妻…しかし衝撃はそれだけでは済まなかった…
飛行機が墜落してしまうというのは、フィクションであっても悲劇ではある…が、その顛末のみではなく、寧ろ「その後」に焦点を当てて語られているのが本書の面白さである…
頁を繰り始めると、「それで?」と続きが非常に気になる…未読の方のために仔細は省くが…
主人公は題名のとおり、パイロットの妻である。夫であるパイロットが乗務していた飛行機が謎の空中爆発を起こして墜落してしまった…衝撃を受ける妻…しかし衝撃はそれだけでは済まなかった…
飛行機が墜落してしまうというのは、フィクションであっても悲劇ではある…が、その顛末のみではなく、寧ろ「その後」に焦点を当てて語られているのが本書の面白さである…
頁を繰り始めると、「それで?」と続きが非常に気になる…未読の方のために仔細は省くが…
2006年1月22日(日) at 11:03
『ヒンデンブルグ炎上』(上・下) ヘニング・ボエティウス (新潮文庫) / HN TASHKENT
本 > 国外小説(翻訳)
ドイツの小説である…
“ヒンデンブルグ”というのは第一次大戦後のドイツで大統領を務めた人の名だが、これは世界の大空を航行していたドイツの飛行船の名でもある。この飛行船“ヒンデンブルグ”は、1937年に大西洋を越えて米国のニュージャージー州に到着した時、謎の爆発で炎上してしまった…こうした事故で危険性が指摘され、飛行機も発達しつつあった中、間もなく世界を覆うこととなる戦雲によって覆い隠されてしまうように、飛行船は急速に廃れてしまう…
作者のボエティウスは、この飛行船“ヒンデンブルグ”の乗員の息子でもある…作品は、世界の大空に巨大な“船”で乗り出した人達に捧げられたものであろう…
作品の最初の方は、若干取っ付きが悪いかもしれない…第二次大戦後の欧州を旅する謎の男の話しから入る…やがて時間は飛行船の時代に遡っていく…飛行船の時代の描写になると、作者の父親の要素も多く入っていると想像される、飛行船の乗員の物語になるのだが、ここは夢中で読める…そして、冒頭の方の謎の男に関することも見え始める…
二つの大戦の間…つかの間の平和の時代に、大空で人々の夢を運んだ飛行船…その時代が終焉する切っ掛けの事件に関わった謎の男が、半ば飛行船が忘れ去られた時代になって漸く「時代との訣別」を自分の中で行う、というのが本筋で、それに飛行船と共に生きた乗員の人生模様が交錯するという、なかなか凝った作品だ…
飛行船に乗客として搭乗する機会など考え難い訳だが、この小説の素晴らしいディーテールの描写は、大いに想像力を刺激してくれる…きっと愕く程に詳細な調査を行いながら綴られた作品なのであろう…
私は、自宅の近所で何気なく見上げた夜空に輝く、たまたま知っている星座を、出掛けた先の他所で見付けると、妙に嬉しくなることがある…空は国々や人々を結び付けているもののように思うのだ…この作品の読後には、そんな想いを新たにする…
“ヒンデンブルグ”というのは第一次大戦後のドイツで大統領を務めた人の名だが、これは世界の大空を航行していたドイツの飛行船の名でもある。この飛行船“ヒンデンブルグ”は、1937年に大西洋を越えて米国のニュージャージー州に到着した時、謎の爆発で炎上してしまった…こうした事故で危険性が指摘され、飛行機も発達しつつあった中、間もなく世界を覆うこととなる戦雲によって覆い隠されてしまうように、飛行船は急速に廃れてしまう…
作者のボエティウスは、この飛行船“ヒンデンブルグ”の乗員の息子でもある…作品は、世界の大空に巨大な“船”で乗り出した人達に捧げられたものであろう…
作品の最初の方は、若干取っ付きが悪いかもしれない…第二次大戦後の欧州を旅する謎の男の話しから入る…やがて時間は飛行船の時代に遡っていく…飛行船の時代の描写になると、作者の父親の要素も多く入っていると想像される、飛行船の乗員の物語になるのだが、ここは夢中で読める…そして、冒頭の方の謎の男に関することも見え始める…
二つの大戦の間…つかの間の平和の時代に、大空で人々の夢を運んだ飛行船…その時代が終焉する切っ掛けの事件に関わった謎の男が、半ば飛行船が忘れ去られた時代になって漸く「時代との訣別」を自分の中で行う、というのが本筋で、それに飛行船と共に生きた乗員の人生模様が交錯するという、なかなか凝った作品だ…
飛行船に乗客として搭乗する機会など考え難い訳だが、この小説の素晴らしいディーテールの描写は、大いに想像力を刺激してくれる…きっと愕く程に詳細な調査を行いながら綴られた作品なのであろう…
私は、自宅の近所で何気なく見上げた夜空に輝く、たまたま知っている星座を、出掛けた先の他所で見付けると、妙に嬉しくなることがある…空は国々や人々を結び付けているもののように思うのだ…この作品の読後には、そんな想いを新たにする…
2006年1月10日(火) at 21:30
年末年始のブログ… / HN TASHKENT
『キングメーカー』(上・下) ブライアン・ヘイグ (新潮文庫) / HN TASHKENT
本 > 国外小説(翻訳)
ベルリンの壁が崩れ、ソ連が赤旗を降ろし、各共和国で混乱が起こり、というロシアを巡る歴史の背後にあった巨大な動き…そんなものが語られるフィクション…実に面白く、連休を利用して一気に読了してしまった!!
本作の主人公は、米陸軍の法務官、ショーン・ドラモンドだ…法務官というのは、軍法に基づく軍人の裁判(軍法会議)で検事や弁護人の役目を担ったり、その他法律問題に関する事務を行う人達のことである。こういう特殊な人が活躍するのだが、「弁護士が事件の謎を調査する」、「一寸腕の立つ男が悪漢と戦う」、「陰謀から免れようと主人公が必死の逃避行をする」、「巨大な陰謀を巡る諜報機関の争い」というような様々な要素が絡み合った、興味深い物語になっている。こういうのは、意外に類例が少ないと思う。
ドラモンドは、法務官になるために通っていたロースクール(法科大学院)時代に交際があり、CIAの幹部となっていた女性から、軍人である彼女の夫の弁護を依頼される。彼女の夫とは、「重大な機密情報を長期に亘ってロシアへ流し続けた」ということで逮捕されてしまったモリソン准将である…
ドラモンドとは、彼が歩兵将校であった頃に仕事上の縁もあったモリソン准将…決して評判の良い男ではない…ロシア関係事案なので、証拠文書の検討のため、ロシア語の得意なスタッフが必要だったドラモンドは法務官仲間にそれを求めたが、既に“検察”サイドの要員となってしまっていた…そこで、ワシントンで活動していた女性弁護士、カトリーナ・マゾルスキーをスタッフに雇う…
ドラモンドとカトリーナは方々で証人や証拠を検討し、モスクワへも調査に出向き、危険な目にも合いながら、事件の真相に迫る…
余り細かいことを綴るのは避けるが、ドラモンド法務官の冒険はなかなか興味深い!!本文は、やや軽口も混じる一人称の語りとなっている…
本作の主人公は、米陸軍の法務官、ショーン・ドラモンドだ…法務官というのは、軍法に基づく軍人の裁判(軍法会議)で検事や弁護人の役目を担ったり、その他法律問題に関する事務を行う人達のことである。こういう特殊な人が活躍するのだが、「弁護士が事件の謎を調査する」、「一寸腕の立つ男が悪漢と戦う」、「陰謀から免れようと主人公が必死の逃避行をする」、「巨大な陰謀を巡る諜報機関の争い」というような様々な要素が絡み合った、興味深い物語になっている。こういうのは、意外に類例が少ないと思う。
ドラモンドは、法務官になるために通っていたロースクール(法科大学院)時代に交際があり、CIAの幹部となっていた女性から、軍人である彼女の夫の弁護を依頼される。彼女の夫とは、「重大な機密情報を長期に亘ってロシアへ流し続けた」ということで逮捕されてしまったモリソン准将である…
ドラモンドとは、彼が歩兵将校であった頃に仕事上の縁もあったモリソン准将…決して評判の良い男ではない…ロシア関係事案なので、証拠文書の検討のため、ロシア語の得意なスタッフが必要だったドラモンドは法務官仲間にそれを求めたが、既に“検察”サイドの要員となってしまっていた…そこで、ワシントンで活動していた女性弁護士、カトリーナ・マゾルスキーをスタッフに雇う…
ドラモンドとカトリーナは方々で証人や証拠を検討し、モスクワへも調査に出向き、危険な目にも合いながら、事件の真相に迫る…
余り細かいことを綴るのは避けるが、ドラモンド法務官の冒険はなかなか興味深い!!本文は、やや軽口も混じる一人称の語りとなっている…
2005年12月25日(日) at 18:14
『アドヴェント・カレンダー』 ヨースタイン・ゴルデル (NHK出版) / HN TASHKENT
本 > 国外小説(翻訳)
クリスマスという時節柄…一寸関係のある一冊を取り上げてみたい…
本書のタイトルとなっている“アドヴェント・カレンダー”とは、クリスマスの4週間前に用意し、日めくり式に小さな小窓を開けると、中にお菓子が入っているというような、欧州でポピュラーな物のことである…
本書の著者は『ソフィーの世界』で知られる、ノルウェーのオスロで哲学教師をしていたという人で、本作は“クリスマス”を巡る24編のお話しをまとめて物語としたものだ…『ソフィーの世界』の手法のように、不思議な世界への扉をふとした切っ掛けで開いた子どもが、物語の世界を旅して色々と学ぶという、なかなかファンタジーな仕掛けになっていて、大人から子どもまで愉しく読むことが出来る…
10年程以前に上梓されたものだが、クリスマスという一つの物語を通じて、自分や家族や歴史と向き合おうという本書は、価値が高い…
本書のタイトルとなっている“アドヴェント・カレンダー”とは、クリスマスの4週間前に用意し、日めくり式に小さな小窓を開けると、中にお菓子が入っているというような、欧州でポピュラーな物のことである…
本書の著者は『ソフィーの世界』で知られる、ノルウェーのオスロで哲学教師をしていたという人で、本作は“クリスマス”を巡る24編のお話しをまとめて物語としたものだ…『ソフィーの世界』の手法のように、不思議な世界への扉をふとした切っ掛けで開いた子どもが、物語の世界を旅して色々と学ぶという、なかなかファンタジーな仕掛けになっていて、大人から子どもまで愉しく読むことが出来る…
10年程以前に上梓されたものだが、クリスマスという一つの物語を通じて、自分や家族や歴史と向き合おうという本書は、価値が高い…
2005年12月24日(土) at 18:03
『壁の中で眠る男』 トニー・フェンリー (新潮文庫) / HN TASHKENT
本 > 国外小説(翻訳)
書店で本書を見掛け、タイトルから「所謂ミステリーだな…」と何気なく手にして表紙を捲ると、劇中人物として“ニューオーリンズ市警警部補”という文字が目に入った…ニューオーリンズと聞き、迷わず求めたのだが、一気に読了してしまった…
1991年2月…物語は、ニューオーリンズのストリップ劇場の裏で、建物を直すために解体をした際、20年程度前と推定される白骨死体が発見されたところから始まる…20年程前の1970年頃に他殺されれた訳である…
この事件について調査をすることになるのが、1970年当時、この劇場でダンサーをしていた、新聞のコラムニストである主人公マーゴ・フォーティエだ。不思議な面々が出てくる物語だが、主人公は20年前を知る色々な人達に当たりながら、事件の謎を追う…
45歳の女性ということになっている主人公…なかなかに魅力あるキャラクターだ!!マーゴ・フォーティエが活躍する物語は、シリーズになっているという…
1970年と1991年2月…片やベトナム戦争の最中で、片や湾岸戦争の地上戦の時期である…1970年頃、20代の若者だった劇中人物達が40代になっている…“湾岸戦争”というのも、今や“歴史”の感だが、本書はフィクションではあっても、ある意味で「“歴史”のサイドストーリー」というような趣がある…
1991年2月…物語は、ニューオーリンズのストリップ劇場の裏で、建物を直すために解体をした際、20年程度前と推定される白骨死体が発見されたところから始まる…20年程前の1970年頃に他殺されれた訳である…
この事件について調査をすることになるのが、1970年当時、この劇場でダンサーをしていた、新聞のコラムニストである主人公マーゴ・フォーティエだ。不思議な面々が出てくる物語だが、主人公は20年前を知る色々な人達に当たりながら、事件の謎を追う…
45歳の女性ということになっている主人公…なかなかに魅力あるキャラクターだ!!マーゴ・フォーティエが活躍する物語は、シリーズになっているという…
1970年と1991年2月…片やベトナム戦争の最中で、片や湾岸戦争の地上戦の時期である…1970年頃、20代の若者だった劇中人物達が40代になっている…“湾岸戦争”というのも、今や“歴史”の感だが、本書はフィクションではあっても、ある意味で「“歴史”のサイドストーリー」というような趣がある…
2005年12月23日(金) at 11:25
『告白』 B・エリツィン (草思社) / HN TASHKENT
本 > 歴史・ノンフィクション
エリツィンがロシアの大統領に在任中だった1993年末頃、既に「彼の歴史的役割は終わったかもしれない…」という声があったような気がする…彼は新たな千年紀と共に“表舞台”から退場し、既に「随分古い話し」のような雰囲気になっている…“エリツィン”と言っても「何それ?」と言われてしまう感もしないではない…
本書は1990年の刊行である。ソ連の赤旗が降ろされる前の、エリツィンが「一つの時代を創る」要素の一つだった時期、その半生を回顧したものである。
ソ連の赤旗が降ろされた後、「ロシアの20世紀史では、“帝国”を起こしたレーニンと、それに幕を引いたゴルバチョフが最も記憶に留められるべき人物だ…エリツィン?“主演”ゴルバチョフの“助演”か…」という見方を耳にしたことがあった…
本書の時点で、エリツィンはその運命を知らない…そうした意味で、本書には「下野した有力代議士の手記」という雰囲気も漂う…
これもまた“史料”か…
本書は1990年の刊行である。ソ連の赤旗が降ろされる前の、エリツィンが「一つの時代を創る」要素の一つだった時期、その半生を回顧したものである。
ソ連の赤旗が降ろされた後、「ロシアの20世紀史では、“帝国”を起こしたレーニンと、それに幕を引いたゴルバチョフが最も記憶に留められるべき人物だ…エリツィン?“主演”ゴルバチョフの“助演”か…」という見方を耳にしたことがあった…
本書の時点で、エリツィンはその運命を知らない…そうした意味で、本書には「下野した有力代議士の手記」という雰囲気も漂う…
これもまた“史料”か…
2005年12月22日(木) at 23:21
『海のサムライたち』 白石一郎 (文春文庫) / HN TASHKENT
本 > 歴史・ノンフィクション
『海のサムライたち』 白石一郎 (文春文庫)
「日本人の海への無関心」というのは本書の著者が用いている表現だが、何となく思い当たる節もある…
著者は海で活躍した史上の人物達が登場する小説を多く書いている。その彼が自作で取り上げた人物達、海に生きた“サムライ”を紹介している。本来は、NHKの“市民大学”という、様々な事象について知識のある方が語るテレビ番組に向けて用意されたものを下敷きとしている本なので、取っ付き易い…藤原純友と言った平安時代の人物から倭寇、村上・九鬼と言った戦国時代の水軍、秀吉の下で活躍した小西行長、漂着した英国人航海士の三浦按針、朱印船で活躍した荒木宗太郎やシャム(今のタイ)で活躍した山田長政など、鎖国に至るまでの多彩な顔触れが紹介されており、非常に面白い。
藤原純友やそれ以前というような古代から、海を巡る人々の活躍の豊かな歴史はあったが、それは江戸時代の鎖国で何処か遠くに追いやられてしまっている。というのが著者の思いのようだ…
以前、コペンハーゲンを訪ねた。北欧に源を発し、欧州を席巻したヴァイキングの末裔達の国々の一つであるデンマークは、島々と半島を領土とする小さな国であるが、美しい街に立ち寄る旅行者も多く、観光にも力が注がれていると見受けられる。案内パンフレットの中には日本語のものもあった。街を歩く際の地図などとしては、日本語のものの実用価値は高いとは思わないが、デンマーク、或いはコペンハーゲンの人達が「来訪者に伝えたい思い」を知る上では、なかなか良い読み物となるであろうと考え、それに目を通した。「デンマークは北海とバルト海に開かれた島々と半島の国です」と冒頭の方にあった。「海に開かれた島々」という言葉が記憶に残る。ヴァイキングの時代から交易を盛んに行い、バルト海を航行する船から通行税を取り立て、それを財源に欧州の様々なものを導入し、というような経過を辿ったデンマークの歩みを思い起こさせるが、同時に「私が住んでいる国も似たようなものじゃないか!!」という思いが沸き起こった…
「四面環海という立地条件に恵まれながら、日本は、海を防壁としか考えない国家となった、日本人は、そろって海に背中を向け、狭い国内だけをみつめて過ごす習性を身につけた。そのためものの考え方も陸地中心に限定され、はるかに広い海を忘れてしまった」と著者は本書の末尾で語っている。西の日本海、東のオホーツク海、北の宗谷海峡と三方を海に“開かれた”稚内でこの言を読むと、何か染入るものがある…そんな思いを頭の片隅に、海を越えてこの国へやって来たであろう珈琲を片手に、猛々しい水軍や、豪胆な豪商の活躍に思いを巡らせながら、頁を繰るのも悪くはない…
「日本人の海への無関心」というのは本書の著者が用いている表現だが、何となく思い当たる節もある…
著者は海で活躍した史上の人物達が登場する小説を多く書いている。その彼が自作で取り上げた人物達、海に生きた“サムライ”を紹介している。本来は、NHKの“市民大学”という、様々な事象について知識のある方が語るテレビ番組に向けて用意されたものを下敷きとしている本なので、取っ付き易い…藤原純友と言った平安時代の人物から倭寇、村上・九鬼と言った戦国時代の水軍、秀吉の下で活躍した小西行長、漂着した英国人航海士の三浦按針、朱印船で活躍した荒木宗太郎やシャム(今のタイ)で活躍した山田長政など、鎖国に至るまでの多彩な顔触れが紹介されており、非常に面白い。
藤原純友やそれ以前というような古代から、海を巡る人々の活躍の豊かな歴史はあったが、それは江戸時代の鎖国で何処か遠くに追いやられてしまっている。というのが著者の思いのようだ…
以前、コペンハーゲンを訪ねた。北欧に源を発し、欧州を席巻したヴァイキングの末裔達の国々の一つであるデンマークは、島々と半島を領土とする小さな国であるが、美しい街に立ち寄る旅行者も多く、観光にも力が注がれていると見受けられる。案内パンフレットの中には日本語のものもあった。街を歩く際の地図などとしては、日本語のものの実用価値は高いとは思わないが、デンマーク、或いはコペンハーゲンの人達が「来訪者に伝えたい思い」を知る上では、なかなか良い読み物となるであろうと考え、それに目を通した。「デンマークは北海とバルト海に開かれた島々と半島の国です」と冒頭の方にあった。「海に開かれた島々」という言葉が記憶に残る。ヴァイキングの時代から交易を盛んに行い、バルト海を航行する船から通行税を取り立て、それを財源に欧州の様々なものを導入し、というような経過を辿ったデンマークの歩みを思い起こさせるが、同時に「私が住んでいる国も似たようなものじゃないか!!」という思いが沸き起こった…
「四面環海という立地条件に恵まれながら、日本は、海を防壁としか考えない国家となった、日本人は、そろって海に背中を向け、狭い国内だけをみつめて過ごす習性を身につけた。そのためものの考え方も陸地中心に限定され、はるかに広い海を忘れてしまった」と著者は本書の末尾で語っている。西の日本海、東のオホーツク海、北の宗谷海峡と三方を海に“開かれた”稚内でこの言を読むと、何か染入るものがある…そんな思いを頭の片隅に、海を越えてこの国へやって来たであろう珈琲を片手に、猛々しい水軍や、豪胆な豪商の活躍に思いを巡らせながら、頁を繰るのも悪くはない…


